144 / 594

気持ちの行方

雄一side "さわんな!気持ちわりぃな!" あの時のルリの顔を思い出して胸が痛んだ。 信也がルリとたまに2人で会ってることは気付いていた。 多少思うことはあったけれど、気持ちのどこかでそれでもルリと一番仲良いのは俺だって自信あったし、あんなにも傷付いてるルリにひどい言葉をぶつけて合わせる顔がなかった。 だから、せめて信也がいることによってルリがせっかく来た日本で1人になっていないのならよかったと思っていた。 早くルリに謝らなきゃ。 そう思っていても、後回しにすればするほど連絡しにくくて、何かきっかけを欲していた。 俺が情けなくウジウジしてるうちに、ルリがまたひどい目に遭うなんて思ってもいなかった。 また、あんな顔をしてるのだろうか。 イギリスで1人だった俺に声をかけてくれたのはルリだったのにな。 走りながら、携帯を取りだし迷わずルリに電話をかけた。 昔から傷だらけで、それでもへらへらとルリは笑うから深く突っ込まない方がいいんだと思ったし、ルリがそう望んでると思った。 あの日、ルリのボロボロの体に触れたとき、初めてあいつのあんなに怯えた顔を見た。 本当はずっとあいつが傷付いてたのに気付いてたのに。 「はぁ、はぁ、はぁ…………っルリ」 なぁ、ルリ。 電話でろよ。どうしても謝りたいんだ。 あの日のことも、今までのことも。 今度はちゃんとお前のこと守るからさ。 息が苦しくて、涙も溢れた。 ここは学校近くのボーリング場。ルリの家までは3駅あるし、走ってどうにかなる距離じゃないけど。 それでも走り続けた。 「………もしもし?ゆーいち?」 ようやく繋がった電話から、懐かしい幼馴染みの声が聞こえた。 怯えたように探る声にまた胸が痛む。 「ルリ!お前さ、今どこ!?すぐ会いたいんだけど、家!?」 「えっ、家じゃない…」 「仲直りしようルリ!今どこ?」 「あ、えと、学校近くの知り合いの家なんだけど、ゆーいちいまどこ?」 よかった。たまたまルリも近くにいたらしい。お互い10分でつく近くの公園で待ち合わせをした。 ほらな。ルリだって俺と仲直りしたかったんだ。 わかるよ。お前、いつだって俺のことは特別扱いしてくれてたもんな。 俺もお前は特別だった。それなのに、味方になってやれなかった自分が情けなくて腹が立つ。 あの時は気が動転してたけど、今もきっと冷静じゃない。信也のしたことにムカついて、お前があの時みたいにボロボロで横たわってるんじゃないかって悲しい。 手を弾いたときからもうずっとあの顔が頭から離れなかった。 その手を、今度はちゃんと掴みたいんだ。

ともだちにシェアしよう!