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気持ちの行方

走ってその公園に行くと、遊具もブランコと、シーソーしかない寂れた小さな公園ですぐに見慣れた金髪を見付ける。 向こうも俺を見付けたらしくベンチから立ち上がって軽く手をあげた。 「ゆーいち、走ってきたの?すごい汗」 「はぁっはぁっ……る、ケホッ!」 「大丈夫?」 ぜえぜえ息が整わないまま喋ろうとして噎せる。 ルリがハンドタオルで俺の顔の汗を拭いてくれる。 ああ、なんか、懐かしいな。 こいつの声も、匂いも。 「ゆーいち座ってて。飲み物買ってくるから。スポーツドリンクでいいよね?」 「けほっ………まって」 離れて行こうとする手をつかむと、ルリがよろけて俺の胸に当たる。 ほんと、細くて軽い。 こんなに簡単によろけてしまう程か細い体で色んなものを溜め込んでたんだって胸がまた痛んだ。 「ルリ、ごめんな。 俺本当はずっとお前がなにか隠してることも、それがいつも傷だらけな理由なのもイギリスにいた頃から気づいてた」 「ゆーいち?」 ルリが不安そうに俺を見上げる。 「お前がいつも誤魔化すようにして笑うから、突っ込まれたくないんだって気付かないふりしてた。 でも本当は、ずっと寂しかったよ。 頼ってほしかったし、もう一度ルリのそばにいれるならお前に頼られたいって思ってたよ」 この気持ちに嘘はない。 それなのに、俺は。 自分の容量をオーバーする問題にひどいことを言って余計にルリを傷付けた。 「ひどいこと言ってごめん、ルリ。やっぱり俺はお前といたい」 まっすぐルリをみて言うと、その瞳が動揺したように揺れていた。 「……なんで、ゆーいちが謝るの……?」 震えた声で泣きそうだとも思う。 なんか、俺まで泣きそう。 俺達さ、こんなに一緒にいてお互いが大切だってちゃんと分かり合えてるのに、踏み込んだことはなかったよな。 「きも、ち悪いって思って当然だよ……。汚いって……思うのも、仕方ない」 「思ってないよ!あの時はそんなにひどいことになってるって思ってなくて混乱してたんだ! だからってお前に強く当たって悪かった!」 「………っゆーいち泣かないで……」 言われて初めて、汗だと思ってた水滴が涙なんだと気付いた。 ルリも、一筋に頬に涙を流して笑う。 踏み込ませないルリと、踏み込まない俺。 原点をたどれば結局同じで、お互いを傷つけたくなかっただけだったはずなんだ。 「これからはさ、なんでも俺に話してよ。信也のことも聞いた。月城先生のことも。 お前さ、そういうの、全部始めに俺に言えよ」 慣れないイギリスで居場所がなかった俺に居場所をくれたのはルリだった。 何をするにしてルリと一緒だった。 友達とかじゃなくて、兄弟みたいな。 もう家族だ。俺はそう思ってる。 「ごめ…………っ オレも、ずっとゆーいちといたい。 ゆーいちのお陰で当時オレはやっていけれてたんだよ」 「知ってるし。てかそれ俺もだよ」 初めて、ルリの泣いたところを見た。 ずっと笑ってたこいつは何度一人で泣いてたんだろう。 「ゆーいちっ!」 ルリが抱きついてきて、しりもちをつく。 その重さに心が少し軽くなった気がした。 ずっとルリをこうやって受け止めたかったんだ。

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