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先生の友人

千side   早く帰ろうと急いだつもりだったけど、折山にごねられなんだかんだ二時間くらい残業しての帰宅になった。 ついでに雨も振りだして、道も混んでいて、いつもよりかなり遅い時間になってしまった。 リチェールはちゃんと寝ただろうか。 エレベーターを降りて、家のドアを開けると中から楽しそうな笑い声が聞こえてきて、寝ていなかったことがすぐ判明する。 「あ、蒼羽さん、千さん帰ってきたー」 リチェールはいつも俺が帰るとぱたぱた犬のように走ってくる。 今日はその後ろからにやにや笑いながらついてくる蒼羽も。 「千さん、おかえりー。お仕事お疲れさま」 「寝てろっていっただろ」 口でそういいつつも、つい癖で鞄と取ったネクタイをリチェールに渡してしまう。 「つい蒼羽さんとの話が面白くて。千さんの学生時代の話とか聞いてたのー。 あ、腕時計ももらうねー。上着もハンガーにかけとくから頂戴」 「お前な。休めって言ってるのが聞こえねぇの?」 「これくらいなんともないよ。 外少し雨降ってたねー? お風呂たまってるから先に入ってきて?」 家に連れてきたのは失敗だったかと思わず思えてしまう。 でも家に置いてたら置いてたで、休めっていったのを聞かずに勉強するんだろうと思うと難しい。 「蒼羽さん、ごはん食べていくよねー?」 「食べる食べるー。 実はリチェールがなんか作ってる時から美味しそうな匂いだなって思ってたんだよね」 蒼羽も。 見てねぇで止めろよ。 てかなんで、こいつらこんなに仲良くなってんの。 「リチェール、お前なぁ…」 「久しぶりに千さんとのごはんだから張り切って作っちゃったー。早くお風呂あがってきてねー?」 柔らかく微笑まれ、怒るに怒れない。 後ろで蒼羽がクスクス笑ってるのが少し癪に触る。 「蒼羽さん、千さんがチューハイ買ってきてくれてるよー。冷やしとくねー」 「お利口さん!リチェール、いいね。有能なパシリの才能持ってるよ」 「褒められてる気がしなーい」 聞こえてくる楽しそうな会話を聞きながら風呂に向かった。 相変わらずリチェールは脱衣所で着替えとタオルが準備されていて、几帳面さが出ている。 さっさとシャワーだけで風呂を済ませたかったけど、わざわざリチェールが湯船をはったんだからと、浸かってみると久しぶりだな、と息をついた。 一人だと、どうしてもシャワーで手短に終わらせてしまう。 アロマはリラックス効果があるんだと、匂い付きの入浴剤をリチェールはよくいれていた。 リチェールの習慣ひとつひとつが俺に馴染んでいった後、リチェールが自分の家に帰ったとき、柄にもなくこの家を少し広く感じた気がした。 本人には絶対言ってやらないけど。

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