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電車
田所side
放課後の職員会議で俺の移動が発表された。
大分厳しい処分だと思う。
別にアンジェリーにセクハラを強要していたのがバレたわけでもないのに。
校長曰くアンジェリーだけじゃなくて、他の生徒からも嫌がらせの報告があったらしい。
校長は一身上の都合で移動だと発表していたが、学校の噂の情報力じゃみんな察してるようだった。
体育祭のことや中間テストの内容もあった会議中、俺は終始俯いたままで会議が終わるとさっさと職員室を出ようと席をたった。
「田所先生。少しいいですか?返したいものがあるので」
見計らったように声をかけてきた月城に舌打ちをする。
「なんすか。忙しいんですけど」
「時間は取りませんので」
胡散臭く笑ってそう言う月城。
なんだよ、ざまぁみろとか思ってるんだろ。ムカつく。
無視しようかと思ったけど、他の教師の咎めるような視線が気になり仕方なく月城についていくことにした。
少し歩いて、昨日アンジェリーを脅した生徒指導室について、鍵を閉められる。
振り返った月城はさっきまでの胡散臭い笑顔はなく鋭く射るような目を俺に向ける。
「な、なんですか」
「これ、返しますね」
握った手を差し出され、迫力のある顔に怖じ気づいてつい素直に手を開いた。
そこに今朝アンジェリーにつけた物をのせられ、ぎくっと息をのむ。
やばい。これこそ、バレたら教免剥奪だ。
顔をあげた瞬間、ガンっと脳に直接響くような音がして後頭部が衝撃をうけた。
目を開けば、月城に口を押さえられてそのまま後ろの壁に押さえられたんだと理解する。
頭がガンガン痛む。
これは、昨日俺がアンジェリーにしたことだ。
「んぐ」
喋ろうにも口を押さえつけられて言葉がでない。
月城の手を離させようと掴むがすごい力だ。
「………次、リチェールに少しでも触ってみろ。
お前がリチェールに与えた恐怖倍にして返してやる」
恐ろしいほど低い声に、ぞわっと背筋が凍って顔をあげると、見たこともないような迫力のある顔をして月城が鋭く俺を睨んでいた。
殺される、と本能から来るような恐怖にひっと喉がなり体が固まった。
手を離された瞬間、力が抜けてその場にへたれこむ。
それ以上月城は何も言わず部屋を出ていった。
しばらくたっても膝が震えてたてずにその場にしゃがみこんでやっと帰る頃には辺りは真っ暗になっていた。
あんなの、始めっから敵いようがあるはずがなかったんだ。
さっきの月城の顔を思い出してぶるっと震えた体をおさえた。
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