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佐倉先生と新しい友達

雅人side 佐倉雅人(サクラ マサヒト)28歳。 子供が多い家庭環境で、昔から小さい子供を見ることが多く、子守りは得意だからとそのまま高校教師になった。 やっと新米教師から一人前として認めてもらえ、今はクラスの担任まで任せてもらえることになって、まぁ順調。 最近の悩みと言えば、クラスの生徒が一人不登校だということ。 渡すプリントを束ねて、車から降りた。 小さな年期の入ったアパートの階段を上がり、201号室のインターホンを鳴らした。 ピンポンピンポンと、二回三回鳴らしてもでない。 でも、メーター回ってるから中にはいるんだろう。 めげずに何度も連打する。 こんなの、親御さんが今いないことを知ってなきゃ絶対にできない。 ぴんぽんぴんぽんぴんぽーん 「うるっせぇな!しつけーんだよ!くそ佐倉!」 軽快にリズムにのって鳴らしてると、短気な男の子がバンと勢いよく飛び出してきた。 「こらこら、先生にくそなんてつけないの。やっほー、純也」 「うるせぇ!帰れ!二度と来んな!」 キャンキャン吠えたって、そんな女の子みたいな顔に小さな身長じゃ怖くもなんともないのに。 「だってさー、純也このままじゃ留年しちゃうよ?学校来ようよ」 「行かねぇよ!帰れ!」 にこっと笑うと、純也はますます声を大きくして吠える。 今日はこのやりとりはもう何十回もしたものだ。 「もう少しで体育祭だよ? 純也全然学校来ないから勝手に二人三脚にしたからね。 こないと相手にも迷惑かかるよ?」 「て、てめぇ!ずるいだろ!」 それこそ、かんけーねぇとか言って良さそうなのに、素直と言うかなんと言うか。 ヤンキーぶって根は優しいんだから。 「ふふっ、とにかく来てよ。明日から練習始まるからね? 相手の子一人練習参加できなんて可哀想~」 「やり方がきたねぇんだよ!オカマ野郎!」 お、オカマ?地味にショックを受ける。 オカマっぽくはないだろ。 「じゃーね、純也。明日学校で待ってるよ」 生意気に何個もピアス開けてるくせに髪だけは綺麗な黒のままの頭をくしゃっと撫でると、0.1秒で叩かれる。   なんかこいつ猫みたいだわ。 全然なつかない猫。 まぁこれで明日は来るだろうと、その日は帰ることにした。

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