180 / 594
佐倉先生と新しい友達
純也side
ピンポーンと軽快な音が部屋に響き、今日は土曜日だし、だれだ?と思いながらドアを開けた。
「やっほー。純ちゃん。来ちゃったぁ」
「今起きましたって顔してるね。もう昼だぞ?」
揃って鬱陶しいほどの笑顔でルリと佐倉が立っていた。
てか、ルリ。
そのセリフお前は俺の彼女かよ。
今日は土曜日だからと油断してた。
「なんだてめぇら!帰れ!」
「うんうん今日も元気だね」
俺の言葉に臆することなく、へらへら笑って佐倉が頭を撫でようとしたので、すぐ振り払った。
土曜日だぞ。こいつら暇かよ。
いや、寝てるだけだった俺が言えたことじゃないけど。
「純ちゃんの成績じゃあ週5日で留年回避なんて難しいでしょー?
オレと佐倉せんせーで見たげようってなったのー。喜べー」
なんで最後命令形なんだよ。
ルリは柔らかい雰囲気で、まぁまぁ優しくない。
「迷惑なんだよ!帰れ!」
「ほらほら、教材は佐倉せんせーが準備してくれたから。
カフェいくよー」
「帰れっていってんだよ!」
「今日はとりあえず、一番壊滅してる数学からだねぇー」
「聞けよ!」
どんだけぎゃんきゃん言っても無視するルリにクスクス笑う佐倉。
こいつらうぜぇ。
「ダメだよ。純ちゃん。
オレ来年も一緒にいたいもん。だからだーめ」
振り返ったルリがふわっと柔らかく笑う。
そんな可愛い顔してさ。
そんなので俺が騙されると思ってんのか。
めんどくせぇから、今日だけは断らねぇけど!
__________
宣言通り、佐倉が大学時代によく利用したと言う長居のできるカフェに拉致られ5時間ぶっ続けで勉強をさせられた。
店側に気を使って佐倉が追加注文に何度か立ち上がって、そのタイミングが休憩だった。
「おい………もう十分だろ………」
体を動かすよりもくたくたで、もう数字もみたくない。
項垂れて二人を見ると、外を見てルリが困ったように笑う。
「いつの間にかこんなに暗くなってたんだねぇ。ごめんねー、疲れちゃった?」
そんな顔するなよ。
俺のためにしてくれてることはわかるから、ぐっと言葉につまってしまう。
「別に、余裕だわ」
「そう?じゃあ続けるね?」
「うぐ」
こいつに慈悲って言葉はないのか。
あっさりまた問題の説明を始めるルリに反論できず、俺も大人しく問題に向かってしまう。
佐倉は相変わらず、にこにこと微笑んでのんびりコーヒーを飲んでやがる。
くそ。ムカつく顔しやがって。
「なに笑ってんだてめー、しばくぞ」
「こら、純ちゃん、オレ今説明してたでしょ。ちゃんと聞いて。あと、その言葉遣いやめなさい!」
佐倉にメンチ切ると、ルリがめずらしく怒ってぺちっと頭を叩く。
怖くないし、むしろムカつくけど、ルリには強く反論できない。
女、子供にひどくしてしまった気持ちになるから。
そのせいで黙ってしまう俺を見て、また佐倉が声を出して笑う。
それには心底、むっかつく!!!
ともだちにシェアしよう!