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テスト明けの休日
そのあと少し辺りをぶらぶら歩いて、夕方になってきたから帰ることにした。
駐車場は少し離れていたから、その場で別れる。
「今度、ルリの家泊まらせて」
「うん、いいよー。いつでも来てね純ちゃん」
「じゃあ、千くん、また学校でね。
今度から出張の時とか、純也預けていい?目離すととヤンチャだからさ」
「ああ。学校でリチェールのこともよろしく頼む」
「はいはーい。まぁルリくんはしっかりしてるから心配はないけど、男子校だしねぇ」
「おい!雅人!勝手に決めんじゃねぇ!」
「えー、だって純也一人にすると悪いお友だちと過ごしちゃうじゃん」
「うっせぇ!」
二人の会話を聞いてると本当にオレ達が子供で二人が保護者みたい。
純ちゃんもぎゃんぎゃん噛みついて雅人さんがへらへらかわしてる。
純ちゃんも口ではああ言ってるけど、多分雅人さんのことを特別に思ってるんだと思う。
だって、ふとしたとき、いつも目で追ってるから。
「じゃーね!千くん、ルリくん!今度うちで鍋ぱでもしようね!」
ぶんぶんと、手を振って雅人さんと軽く手をふる純ちゃんに手を振り返し、オレ達も駐車場にむかった。
もう季節はすっかり秋で、紅葉がカサカサと道に落ちて、街を彩っていた。
「リチェール、そこの店に寄っていいか」
「はーい」
千が入ったお店は有名なブランドのアパレルショップ。
そこのウィンドウに飾ってた赤のスヌードを店員さんに在庫あるか聞いてる。
赤のスヌードって。
いや、顔がいいから似合うだろうけど少し若くないか?と思ってると、千が会計を終わらせてオレにその袋を渡してきた。
「ほら」
「はーい。持つねー」
渡された袋を持つと「そうじゃなくて」と、千があきれたように袋からスヌードを出した。
それからクルっとオレの首にゆったり巻く。
「え」
キョトンと首をかしげると、千がふっと微笑んだ。
「中間テスト、一位おめでとう」
オレに?
たしかに、苦手な古典を克服して、初の首席をとれたけど。
「え、あ、あの。これ、オレに?いいの?」
「ああ」
「………嬉しい。千、ありがとう」
値段だって、決して安くないのに。
嬉しくて、視界が滲みそうになるのをぐっとこらえた。
「首もと絞めるような服苦手だろ。マフラーとかネクタイとかハイネックとか」
「え?うん。よく知ってるね?」
首に何にが触れるのが苦手だ。
父さんに下が締まって気持ちいいからって首を絞めながらよく挿れられてたからか、ぞわっとする。
だから服も上は大きめのものや首もとがゆったりしたものが好きだし、制服のネクタイも緩くしか巻かない。
「いくら寒さに強いからってあんまり首もと開けすぎるな」
わしゃわしゃ頭を撫でられ、顔が赤くなる。
スヌードは2重に巻いても、ゆったりして、ふわふわ少し首に当たるだけ。
暖かくて、気持ちいい。
「千、本当にうれしい……。オレこれ毎日つけるね」
「ああ」
鏡を見ると、クリーム色のニットのトップスに赤のスヌードはよく合ってるように見えた。
どうしようもなく嬉しくて、抱きつきたかったけど、外だから我慢した。
その分車に戻って、ドアを閉めると周りに人がいないのを確認してぎゅーっと抱き付く。
千は、はいはいって笑って背中をポンポンするだけ。
「デートだけで十分すぎるごほうびなのにー。
千、オレのこと甘やかしすぎー」
ぐりぐり服に顔を埋める。
本当に、甘やかしすぎだよ。
幸せに浸ってると、千がふっと鼻で笑う。
「まぁ、帰ったら田所に抱きついてたお仕置きはするけどな」
「えっ」
その一言にぴしっと固まり、見上げると千が意地悪く微笑んでいた。
「あまり前だろ?俺以外の男にベタベタしたんだから」
「お、お仕置き……?」
「痛いことはしねぇよ。恥ずかしいことはするけど」
恥ずかしいこと?
頭で理解するより早く、顔が熱くなる。
「え!まって、千っ!
抱き付いたんじゃないよ、純ちゃんを殴るかもって思って止めただけだよ!」
「言い訳は聞きたくねぇな」
「千!言い訳とかじゃなくて……」
「妬いて不機嫌になるとリチェールは怯えるから、これからはこうやって発散することにする」
「妬いてたのっ?いつ?」
「だよなぁ、お前は気付きもしないよな?今夜みっちり教えてやるから」
どんなに必死に弁解しても、笑ってハイハイってかわす。
「リチェール、俺お前に甘いよな?これからは少し厳しくいこうと思って」
胡散臭いほどの千さんの笑顔に、顔から血がさあっと引いていく。
それから、家についてからは、あまり思い出したくない内容で、気がつけば朝だった。
そして、もう絶対、千にヤキモチを妬かせないと決意した。
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