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悪友
引き寄せられたと思ったら、どんっと強く押され後ろに尻餅をついた。
逃げなきゃ!と、すぐ体を起こして走ろうとするけど、後ろにいた男に押さえられて、強く背中を打ち付けた。
くそっ。いてぇし。
なんなんだよ、これは。
押さえつけてくる男とは別のやつが俺の服を捲り上げようとしてひっと息を飲んだ。
「っざけんな!!!!はなせ!!!離せよ!!!!」
「声でけぇよ!」
ガン!!!っと脳に直接衝撃が響く。
口のなかに鉄の味がじわっと広がって、殴られたと理解するまで少し時間が止まった。
クラクラする頭でしばらく動けずにいと、ベルトをとられ、いよいよやばくなる。
「……っ翔さん!!助けて!!!翔さん!!」
ずっと見ているだけだった翔さんに、夢中で手を伸ばした。
自分でもなぜ翔さんすがったのかよくわからないけど、とにかく必死だった。
翔さんは、ふんっと鼻で笑う。
「お前さ、俺と似てるんだよ」
俺を見下ろす目はどこまでも冷たくて、感情がない。
「お前一人でいられないタチだろ。
で、一人は嫌だからってとりあえずてきとーに時間潰せるとこ見付けてつまんねぇと思っててもそこから離れられないでさ。
俺と一緒。だからすぐわかったよ」
翔さんは立ち上がり俺の目の前で屈んでバシッと殴られた。
「お前が俺を利用してるのも、捨てたのも」
そう言った翔さんの顔は、なんだか泣いているようにも見えた。
その表情に、呆然としてしまう。
この人も、多分俺と同じだったんだ。
捨てられるのが嫌で、寂しくてあんなにいつもバカみたいに騒いで。
俺のずるさに気づきながらその輪に入れてくれていたのだと今さら気付く。
それなのに俺は、利用して突き放してまた利用して、殴られてさ。
それでもすがろうとして、このザマだ。
ああ、なんか、すっげー、自業自得じゃん。
あいつらの手が俺のベルトに差し掛かる。
もう、どうでもよくて、ゆっくり目を閉じた。
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