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悪友
二人で息を潜めて山形の遊具に隠れる。
ルリのとの距離が近くて、その細さが触れたところから伝わった。
なんで、こいつはこんなに強いんだろう。
こんな状況でもオレを安心させるために笑ってくれて、相手が多数でも躊躇うことなく助けてくれる。
普段は柔らかくて、優しくて、可愛いのに、たまにかっこいいとかスゴい。
俺より細いこの体でどうしてそんなに強いんだろう。
なんか、俺って本当だめだめだ。
「ルリは、なんでそんなに強いの……」
「んー?どうしたの、突然」
この見付かったらヤバイ緊迫した雰囲気で、へらっと軽く笑うのもスゴい。
「いいから答えろよ。ルリって、怖いものない?」
「えー?そうだねぇ。オバケは苦手かなぁ」
「そういうのじゃなくてさ」
「純ちゃんは何が怖いの?」
ルリが首をかしげてふわりと笑う。
たったひとつだけだ。俺が怖いのなんて。
「…………俺は」
「見付けたー!!!」
口を開こうとした瞬間、大声で名前を呼ばれびくっと顔をあげた。
「お前さぁ!ほんとやめろよこーゆーの!!!心臓止まるかと思っただろーが!!!」
汗だくの男が情けの顔をして荒い呼吸で立っていて走り回ったんだとわかった。
「まさ………」
名前を呼ぼうとしたけど、ぎゅっと大きな腕に包まれて、言葉が止まった。
雅人のシャンプーの匂いに包まれて、一瞬で気持ちが緩んでしまう。
またじわっと涙があふれた。
俺、ここを飛び出して、なにされそうになった…………?
殴られて、押さえつけられて、服も乱暴にとられそうになったからボロボロだ。
こんなの自業自得なのに。
こいつはこんな冬空の中汗をかくほど探していてくれたんだ。
「雅人…………っ」
ああ、やっぱり無理だ。
手遅れになる前に、雅人とは距離を作りたかった。
どんな俺のわがままでも笑って聞いて、たまにちょっとしたことですごく怒って。
こんな優しい人の温もりを知って、今さらもう離れられない。
「とりあえず、家帰ろう?」
穏やかにそう言われ、こくんと頷く。
早くあの温かい家に帰りたかった。
雅人に差し出された手を、初めて握り返す。
すっぽり俺の手を包んでしまった雅人の手は思ったよりも大きくて、温かい。
「リチェール!」
立ち上がると、また聞こえた新しい声に振り替える。
あの、いつもスカした月城が額にじんわり汗をかいてたっていた。
「千!」
少し乱れていた呼吸を整えるようにふーっと息をつくとルリを引き寄せた。
「俺が迎えにいくまで待てって言っただろ」
「ごめんねー?怒ってるー?」
「………まぁ、無事ならそれでいい」
ルリが月城を見た瞬間から、心から安心したような柔らかい笑顔を浮かべて月城に飛び込む。
普段飄々としていた月城の意外な姿に、二人がどれだけお互いを想い合ってるか伝わってきて、なんだか少し切ない。
「………純也?」
俯いてると、雅人に心配そうに見られてふいっと顔をそらした。
「………なんでもない。早く、帰ろう」
あの二人を羨ましがったって、俺には無縁の話だ。
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