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亀裂

リチェールside もうめっきり寒くなった11月の中旬、街はすっかり冬色に染まっていた。 日本の寒さくらいイギリス育ちのオレからしたら何ともないけど、気温の急激な変化に少し体調を崩していた。 「ルリ、お前明らかに体調悪いだろ」 ゆーいちが眉間にシワを寄せて顔を覗き込んでくる。 さすが幼馴染み。オレ絶対表情に出してないのに。 朝は微熱程度で、あと二日行ったら休みだしと軽く考えて登校したら、昼前になる頃にはどんどん体が重くなっていた。 「んー。風邪かなぁ」 「帰れよ。お前熱でると下がるの時間かかるんだから」 ゆーいちに言われ、たしかに言われてみればいつも長引いていることに気が付いた。 うん、帰ろうかな。 学年首席になれたのは嬉しいけど、別にこだわってる訳じゃないし、少し位授業が遅れたって取り戻せるし。 「昼休み、とりあえず寝てみて考えるよー」 一切れ食べて止まってしまったパンをゆーいちに押し付けて立ち上がった。 あと30分。 寝るには丁度いいよね。 「ルリ、食いかけのパン渡してきてさ、風邪うつるかもーとか心配しねぇの?」 すでにバクバク食べながら言うゆーいちに、はいはいと手を降る。 「手でちぎって食べるから口付けてないもん」 「どこぞのマダムだ」 「ルリってちょこちょこ女っぽいよな」 鋭く突っ込むゆーいちに、純ちゃんが便乗する。 紹介すると、案の定この二人はウマがあったようで、一気に仲良くなった。 オレがバイトでさっさと帰ったりする日、二人でゲームセンターに行ったりもするらしい。 「オレ絶対二人より男らしいから!じゃあ、ちょっとお昼寝してくるねー」 千と付き合ってることを知ってる二人は、特になにも言わず言ってらっしゃいと手を降った。 __________ 「失礼しまーす。せんせー、寝かせてー」 きちんと三回ノックしてドアを開けると、千がイスごと振り替えってオレの顔を見るなり眉を潜める。 「………お前、熱あるだろ」 顔見た瞬間一瞬でバレた。 職業柄なのかな? 「すごいねぇ。オレそんなにわかりやすい?」 「どっかのチビスケが体弱いくせに無理しがちだから気にして見てるからな」 「えー?チビって誰のことかなー?」 ははっと笑って、背伸びをする。 したところで千の方がずっと高いけど。 中に入ると、奥のベットに毛布を準備してくれた。 今日は累くんまだ来てないのか、今保健室には二人だけ。 着ていたグレーのニットガウンを脱いで、ついでにネクタイも外してハンガーにかけるとベットに潜り込んだ、 千が上から毛布と掛け布団を被せてくれる。 「そこそこ高いな」 こつんと、おでこをくっ付けられ、余計に顔が熱くなる。 ふわっとタバコの匂いがして、胸がきゅんとした。 「明日はバイトあるし今日はやっぱりもう帰ろうかなぁ?」 「ダメ。帰るなら放課後車で送ってるから。ここで寝てろ。 お前もう少し変なのに好かれる自覚しろよ。こんな赤い顔して一人で帰らせるわけねーだろ」 家まで歩けないほどの体調でもないし、大体日中ただ歩いてるだけでそうそう危険はないと思うけど。 千は心配性過ぎる。 「オレ喧嘩も強いし、足も早いのにー」 「その自信過剰さがたまに自分の首絞めてんのいつ気付くんだろうな」 「事実ですー。千が心配症すぎるの」 「………言うこと聞けないならどうなるか教えただろ?」 千の意地悪な笑顔にいつかの恥ずかしい思い出が蘇り、ブワっと赤くなるオレを千が揶揄うように笑う。 「それもと誘ってんの?やらしい。昨日もしただろ?」 意地悪く笑う千に、昨夜のことを思い出して、もう!とさらに大きな声をあげてしまった。 この風邪は絶対昨日しすぎて、寝不足だからだ。千のバカ。 むくれていると、千がオレの機嫌を取るためにそっと触れるだけのキスを落としてきた。 すぐ離れようとする唇に物足りなくて、白衣を引き寄せ、舌を絡ませた。 「………っんぅ……… 」 オレの拙い舌はすぐに絡めとられてしまい、あっという間に主導権を奪われる。 最近はどちらかでもなく、自然と触れあうことが増えた気がする。 唇がゆっくり離れて目が合うと千が意地悪く笑って頭を撫でた。 「そんな惚けた顔してんじゃねーよ」 「………うん」 「今日は熱もあるし、うちに泊まれよ」 「……いいの?明日は金曜だし、明日でもいいよー?」 「いつでも来たいときに来いって言ってるだろ。熱がある時は尚更1人にさせねぇよ」 そう言ってくれる千に素直に頷いた。 なんだか最近は歯止めがきかない。 前なら次の日学校ならバレる可能性が高くなるからって断ってた。 千がどこまでもオレを甘やかすから、どんどんオレ自身が自分に甘くなっていく。 「毎日でも連れ帰りたいのに、どっかのチビは自分の家大好きだもんな?」 違うよ。 一緒に暮らしてることがバレた時、責められるのが甘えてるオレじゃなくて、大人の千だから自重してるの。 わかってるくせに。 意地悪言う千をムッと見上げると、クスッとわらわれた。 「早く冬休みになんねぇかな」 冬休み、親に会いにイギリスに二人で行く。 夏休みに決めたことだったけど、ずっと先のことだしと考えるのを後回しにしていたら、もうあと一ヶ月ほどなのだと少し焦る。 「その話、本気だったんだ……」 「当たり前だろ」 父さんはもうオレに興味がないだろうし、母さんは元からどうでもよさそうだし。 まぁ二人とも世間体を気にして、むしろお金さえ払えば放っておいていいことを都合がいいとすら考えて、高校は最後まで通わせてくれるだろうから、本当はあまり波を立てたくなかった。 「リチェールのこと貰うんだから、一応法的な手続きはしとくべきだろ。リチェールもそうしたら堂々と住所をうちに移して一緒に暮らせる」 「慎重だねぇ」 「大人ですから。リチェールにはしんどいことに向き合わせることになるけど、必ず幸せにするから一緒に頑張ろう」 それでも千もオレと一緒にいる未来を見てくれてることに、嬉しくてまた千にぎゅーっと抱き付いた。

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