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亀裂
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目を覚ましたら、見慣れない白い天井にぼーっとする頭で昨日のことを思い出そうとした。
頭がだるくて、働かない。
千がオレと累くんを庇って階段から落ちて、記憶なくなってて、それから………?
待ち合い室のベンチに座ったあとが思い出せない。
とにかく頭がボーッとして、熱があるんだと自分でもわかる。
て、いうことは倒れちゃったのかな?
じゃあここは?
「………あ、ルリ起きた?」
名前を呼ばれて横を向くと、純ちゃんが桶をもって立っていた。
なんで純ちゃんが?
てかここ本当どこだよ。病院でもなさそうだし。
「雅人ー!ルリ起きたぁー!」
後ろを向いて叫ぶ純ちゃんを見て雅人さんの家かな、と理解した。
バタバタバタと走る音が聞こえて雅人さんも純ちゃんの後ろから顔を出した。
オレを見てほっとしたように胸を撫で下ろす。
「よかった。ルリくん起きたんだね。
昨日帰るルリくん追いかけたら倒れてて、焦ったよー」
「…………ごめんなさい」
「どうしてルリくんが謝るの?辛かったね。ゆっくり休みなさい」
雅人さんに優しく微笑まれ、胸が熱くなる。
…………うん、辛かった。
うん、うん。と何度も頷くと、涙が出そうになって、腕を目に当てた。
千は付き合ってたこと、もう忘れてるんだ。
付き合ってたことどころか、オレの存在自体を。
それがどうしようもなく不安で、怖くて、体が震えた。
「じゃあ俺はご飯作るから、純也はルリくんのことよろしくね」
「わかった」
雅人さんが出ていったのがわかったけど、布団の中から出れずにいた。
純ちゃんがベットのすぐそばに来て、腰を下ろす。
「ルリ、体拭こう?汗すごいし、悪化する」
汗で額に張り付いた前髪を純ちゃんが指でどかしてくれる。
千の血がついた制服から、見覚えのないTシャツになっていて、サイズが変わらないから、たぶん純ちゃんのもの。
「ルリ、Tシャツ脱げる?」
「うん」
汗をかいたTシャツを脱ぐと、純ちゃんが手に持っていた桶にタオルをいれてぎゅっと絞りオレの体を拭いてくれた。
「オレ、自分で拭けるよー?」
「いんだよ。お前はなにもしなくていい。休んでろ」
「えー、純ちゃんが優しいとか怖いんですけどー?」
純ちゃんが気を使ってくれてるのがわかって、ふざけて笑うと、タオルをべしっと顔にぶつけられた。
「無理して笑わなくてもいい。
色々疲れただろ。まだ寝てろよ」
優しい言葉に、また胸が熱くなる。
千は今もまだ病院かな?
累くんといるのかな?
考えたくないことばかり浮かんで、唇を噛み締めた。
「ルリの熱が下がったら、病院にいく?」
明日はたしか土曜日。
どうしようか、悩んで小さく頷いた。
累くんといる光景を見るのはいやだけど、やっぱり千に会いたい。
「じゃあ今日はゆっくり寝て早くよくなれ」
「うん。純ちゃんありがとう」
純ちゃんはふっと笑ってオレの頭を撫でてくれた。
こんな夜に、純ちゃんがいてくれてよかった。
一人だったら、たぶんもっと苦しかった。
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