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亀裂

雅人さんが作ってくれた雑炊を食べて、お薬を飲んで、次の日にはすっかり熱も下がって回復していた。 「ごめんね。俺もついていきたいんだけど、どうしても今日は部活の遠征に引率しなきゃいけなくて」 車で病院まで送ってくれた雅人さんが申し訳なさそうに笑う。 看病してもらっただけでもありがたいのに、わざわざ忙しいなか車で送ってもらって申し訳ないくらいだ。 「全然!すごく助かりましたー。雅人さん、ありがとー。純ちゃん借りてくねー」 「うん。ちゃんと暗くなる前に返してねー。 もしルリくんが寂しいなら是非今夜もうちの泊まってね」 「俺をものみたいに扱うな!!」 「うんうん。純也は今日も元気だねぇ」 ぷんぷん怒る純ちゃんを雅人さんがケラケラ笑いながら撫でて、車の窓を閉めた。 手をふって雅人さんを見送ると、純ちゃんと入り口にむかった。 昨日と病室が変わってるかもしれないから受付で聞いて、その場所に向かう。 「ルリ、少しでも辛くなったらちゃんと言えよ」 「うん?」 純ちゃんにいきなり言われて、何のことかわからず顔を傾げる。 「いつもにこにこしてるお前がさ、月城が搬送されるとき泣いて暴れてところ見てさ、どれだけあいつがお前のなかで大きいのか痛感した。 でもお前は辛くても笑うじゃん。俺察しとかよくないし、気付ける自信ないしすぐ言えよ」 そう言えば、意識のない千を抱き締めてそんなことをした気がする。 あの時は必死で周りが見えてなかったなと、苦笑した。 「純ちゃん、本当に優しいよねー。ありがとう」 純ちゃんが心配そうにオレの顔を覗き込む。 それから、小さく頷いて病室の番号を目で追った。 千は617号室。 613、615と、数字が近くなるにつれ緊張してドキドキと鼓動が早くなる。 甘いの苦手な千が好きな甘さ控えめのチーズケーキと入院中摘めるような日持ちのいいお菓子の詰め合わせが入った紙袋がカサカサ揺れる。 喜んでくれるといいな。 「先生はルリくんから僕をかばうようにいつもそばにいてくれたんです」 616号室まで来て、聞こえてきた累くんの声に足を止めた。 「ルリ?昨日の?」 誰だそれ?というような千の声に胸が鋭く痛む。 「うん。昔色々あって、ルリくんが怖いんだ」 「色々?」 「それは言いたくない。 あの日も、走って追いかけてくるのが怖くて逃げてたら、先生が庇うように追いかけてくれてああなったの。 だから、本当に僕のせい。ごめんね、先生」 「いや、それ折山は悪くねぇだろ」 中から聞こえてくる話に、顔が強張る。 何を、言ってるの? いや、間違ったことは言ってない。 累くんはオレを怖がっていたし、そのきっかけになることだってあった。 あの日も怯える累くんをオレが追いかけたのも、事実だ。 事実だけど、そんな言い方………。 ぐっと唇を噛んで固まってると、純ちゃんがチッと小さく舌打ちをしてドアを乱暴にあけた。

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