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代用品

__________ バシャッと痛いほどの冷水をかけられ、意識が覚醒した。 何が起きたかわからず体をあげようとすると身体中が悲鳴をあげ、べちゃっと転んだ。 そして、自分の両手が縛り上げられることに気付く。 『よかった……。目を覚まさないから、殺しちゃったかと思った』 目の前では父さんが悲しそうに微笑み、ああ、夢じゃなかったんだと目の前が暗くなる。 どれくらい気を失ってたんだろう。 『…………父さん、手、外して………』 『だめ。もう二度と、エリシアを手放さないよ』 エリシアって、呼ばないで。 オレは、リチェールだ。 父さんか、母さんかどちらがつけたか分からないけど、千がそう呼んでくれたから、リチェール。 『父さんは、たくさん女のひといるでしょ……』 『うん。でも一番はエリシアだけだよ。 ねぇ、仲直りしよ?』 殴って首を絞めて犯して、手を縛り上げて、真冬に水ぶっかけてさ。     なにが仲直りだよ。 大体、あんたがほしいのは母さんだろ。 『昨日はエリシアの嫌がることばかりして悪かった。 でもエリシアも悪いんだよ。僕から離れようとするから』 虚ろな瞳で笑みを浮かべる父さんに、ぶるっと体が震えた。 手をなんとか抜け出そうともがくけど、頑丈だ。 『だから昨日のことはフェアに忘れてさ。今日はエリシアが喜ぶことをしよう』 『………だったら、離して』 そう言うと、父さんの笑顔が凍りつきピクッと眉が跳ねる。 その瞬間、ガツンっと頬に衝撃が走った。 殴られるって、わかってた。 この人が、オレに優しくするはずなんてないんだから。 『頼むからあまり怒らせるなよ。僕だって優しくしたいんだから』 怒りを押さえたような、苦しそうな笑いを浮かべながら、父さんは何かのクリームを手にのせた。 なにか、というよりは、今から始まるであろうことに、想像はついたけど。 『エリシア、これ前回かなりお気に入りだったよね?』 にこりっと笑って言う父さんに、その持ってるものが確信に変わる。 『前のは飲むタイプだったけどさぁ、塗る方がよく効くらしいよ。 ちょっと危ないらしいけど、強情なエリシアにはこれぐらいがいいよね?』 『……刑務所に、入りたいわけ?』 情けなく震えてしまった声を装うように睨むけど、父さんは相変わらず楽しそうに笑う。 『ははっ。なにそれ。どうやってバレるの?』 ここからお前を一生出さないのに。 そう続けられ、クリームがついた指を後孔に押し込められた。 「…………っ」 昨日傷付けられたせいで、鋭く痛むそこにぐちょぐちょと嫌な水音をたてて、中に塗られていく。 『大丈夫。こわがらないで。 僕は仲直りしたいだけなんだ。今日はエリシアが喜ぶことしかしないから』 だんだんと塗られた所が熱を帯び、疼いてくる。 それがすごく気持ち悪くて、ぎゅっと唇を噛み締めた。 『あはは。でも、やっぱいいねその怯える表情。ね。ちょっとだけいじめていい?』 『や、だ……っ』 『いじめるよ』 楽しそうに笑って、父さんは指を深く食い込ませた。 『ひ………っ』 グリグリ乱暴に指を動かされ、痛いはずなのに体に気持ち悪いほどの快楽が走る。 「ん…………っんぅ………」 声をあげなくなくて、唇から血がにじむほど噛み締めるけれど抗えなかった。 『んーっとね、これとか、たぶんエリシア気に入るんじゃないかなぁ』 楽しそうに父さんが取り出したのは、球体が棒状に繋がった物だった。 それを見て、さぁっと血の気が引く。 『アナルビーズ。何個入るかな?』 『やだ………っ父さん、おねがい………っ』 たったこれだけで一々反応してしまうのに、こんなのも入れられるのは恐怖でしかなかった。 さっきの媚薬をたっぷり道具に塗り込んで後孔に押し当てられた。 「やだ!お願い!本当にいやだ!!」 『だからさ。その言葉やめろって!』 イラッとしたように顔を歪ませて、一気に奥まで押し込められた。 「────ッ!!」 びくんっと体が震えて、痺れるような快楽に目がチカチカした。 『はは。淫乱だなぁ。感じてるエリシアどうしようもなく可愛い』 「んぅ………っ」 唇が重なり、舌を弄ばれる。 噛みついてやりたいのに、怖くてできないなんて、情けない。 『エリシア、愛してる』 こんなにひどいことをしてくるくせに、優しく抱き締めてきて、泣きそうになる。 『ね、エリシアも愛してるって言って?』 悲しそうに父さんが笑って、息がつまった。 父さんも、辛いんだね。 こんな状況になって初めてこの人の気持ちが1ミリだけ理解できる。 自分への気持ちのない相手に縋る想いは、虚しいだけだよね。 抜け出せなくて、どうしようもないよね。 わかるよ。 ……千、あなたは昨日、こんな気持ちでオレを抱いたのかな。 本当に、つくづくオレはこの父親と同類だ。 「やだ……っ」 ぼろぼろ涙を流しながら首を降ると、チッと舌打ちが聞こえて、同時に殴られる。 殴られると痛みで少し感覚が中和されて都合がいいとさえ思えてしまう。 こんな風に弄られるなら、殴られる方がずっと耐えられる。 怒りを買おうと、皮肉な笑顔を見せてやった。 『気持ち悪いんだよ、ドヘタクソ……っ』 一気に顔が強ばり頭を捕まれそのままガンっと壁に叩き付けられた。 痛さよりも、もう感覚が薄れていくようだった。 『あー、もう。だめだな。 エリシアが素直じゃないのはわかってるんだから。ごめんね殴って』 ふーっと怒りを耐えるように深くため息をつくと、父さんは固い笑顔をむけた。 『素直にさせてあげる』

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