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代用品

「ひぃ……ッああ────っ!』 声も押さえられず、狂ったようによがるオレを見て父さんが楽しそうに笑う。 後ろに入れられたアナルビーズは激しく動いていて、それなのにイけないように前を縛られていてもう気持ちいいのか苦しいのか分からないくらいだった。 「ぁう……っもぅ、やめてぇ……っ」 『何て言ってんのかわかんない』 「あ、あ……っやだぁ───ッ」 また中の振動が強さを増して、逃れようと体が勝手に抵抗する。 いきたくて、苦しいくらい。 それでも、好きだとは言いたくなかった。 『ほら、いきたいんだろ。早く言えよ。僕が好きだって』 「あ、んぅ」 ぺろっと胸を舐めながら甘く噛まれ、それだけで達しそうなる。 『強情だなぁ』 「あぅ……っ」 ズルっと一気に引き抜かれ、体がびくんびくんと揺れた。 後ろからカチャカチャとベルトが外す音が聞こえて、必死に逃げようとするけれど、すぐに押さえ付けられてしまう 『ほら、一言僕を好きだって言えば、楽になれるのに。 もしかしてこーゆーのが好きなんだ?』 「ちが……っ」 『ならもう少しいじめてあげる』 怖くて、言葉さえも途切れるほど震えてしまう自分が情けない。 父さんは優しくオレの頬を撫でて、後ろからオレを貫いた。 「────っぃやあああ……っ!」 急に押し寄せた乱暴な快楽に体全身が震える。 父さんはそのまま激しく動いて、気が狂いそうなほど敏感な感覚に、もう苦しさしか残っていなかった。 『ほら、イきたいんだろ……っ この、まま。ずーっと一緒にいれるんだから、素直になっとけよ。エリシア、愛してる』 オレが愛してると言えば、この地獄のような拷問は終わるのだろうか。 終わるはずがない。 この人の狂気じみた執着心は、これから先ずっと続くだろう。 ただの言葉でしかない。 言うことで、今をとりあえず乗りきれるなら言ってしまえって思うのに。 "リチェール、愛してる" 泣きたくなるから、考えないようにしていた愛しい顔が頭に浮かんで涙が溢れた。 オレが愛してるのは、千だけだ。 初めての日、怯えて泣いてしまったオレを優しく撫でてくれた。 愛してるって何度も優しく囁いてくれた甘い声が、頭から離れない。 『早く言えって!!エリシア!!』 ガンっと乱暴に奥を付かれ、また悲鳴をあげてしまう。 そのまま体を転がされ、足を大きく広げられる。 また一度抜かれたものが中に入ってきて、ああ、汚いなって思う。 父さんも、オレも。 もうイきそうなのか、首に手をかけられ腰が激しさを増す。 『エリシア、愛してる……ッ』 この言葉に答えたら、楽になれる。 そして、言ってしまいそうな自分に吐きそうなほど嫌気がさした。 このまま、父さんはオレを手放さないだろう。 もう母さんはそばにいないのだから、この人が、すがるものは何もない。 それなら、いっそ___。 …………ねぇ、千。オレ、やっぱりさ。 「せ、ん………っ」 最後に愛しいひとの名前を呼んで、涙が頬を伝った。 そして、自分の舌を思いっきり噛んだ。 _____あなた以外を愛してるなんて、言えないよ。 キツく舌を噛んだ口内にどろっと血が溢れて、口の端から漏れた。 父さんはそのことに気付かず、ぎゅーっとオレの首を締め上げて、中に精を吐き出した。 舌噛みきるのってさ、出血で死ぬんだっけ、舌を喉に詰まらせて死ぬんだっけ。 今さら、どちらでもいいけど。 "自分のこと次汚いって言ったら怒るからな" あなただけだよ、こんなオレを守ると言ってくれたのは。 生んだ親でさえも代用品としか扱われなかったこのオレを、あんなに暖かく愛してくれた優しい千。 やっぱりあなたの隣に並ぶにはオレは分不相応だったみたい。 『………エリシア?』 父さんが不審そうにオレを見下ろす。 体を揺すられ、ずるっと抜かれてもぴくっと体が少し強張っただけ。 もう少しで、意識も手放せるのかな。 『おい?エリシア……』 パンっと頬を打たれたけれど、感覚がない。 父さんの顔ももう見えなかった。 『おい!なんの冗談だよ!!エリシア!!』 でもその声はやっぱり泣いてるように聞こえる。 人から見たらこの人はきっと狂ってる。 でもその弱さもずるさもオレには痛いほどよくわかるよ。 きっとオレが愛してるって言ったって、それは父さんを傷付ける言葉にしかならないのに。 オレには応えることができなかったけど、その気持ちだけは受け止めるからそれで勘弁してくれるかなぁ。 最後の最後まで、代用品しかないオレがさ、幸せを見付けれたのはあなたのおかげ。 意地悪な笑顔も、甘い声も、強引な指先も全部全部大好き。 千は、きっとすぐ素敵な人が現れるだろう。 だって世界一いい男なんだから。 幸せになって。 そんなにひとに愛されたんだからオレは幸せ者だ。 こんな汚くて、弱くて、情けないオレだけどさ。 いっときだけでも心が繋がっていたと、信じさせて。 「_______。」 口を開いたけど、声は出なかった。 最後にもう一度、千の顔を思い浮かべて目を閉じた。 "あいしてる"

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