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リチェール
結局時間をかけて食べた量はほんの少しだったけど、無事点滴を外してもらえた。
「よくがんばったな」
頭を撫でると、自分からすりよってきて、猫のようだと思う。
片付けに来た看護師も喜んでいた。
"今日は千が来る前、すこし散歩したからお腹すいてたのかなぁ"
リチェールが得意気に笑いながらノートを見せてくる。
「まさか一人でいってないよな?看護師連れていったか?」
なんで?と言うように首をかしげるリチェールにいらっとしてしまう。
「お前今声でないんだぞ。わかってんの?」
病院で早々ないとわかっていても、何かあるんじゃないかなと不安になるのは俺の過保護だろう。
それでも声がでないなら、なるべく一人での行動は意識して控えてほしい。
"千の心配性。ただのリハビリじゃん。何かってなんだよ。そういう目で見ないで"
悪びれる様子もなく、むしろすこしムッとしたようにノートを出してくるリチェールに、ピクッと眉が寄る。
リチェールの気持ちも、理解できないことはない。
傷物みたく扱うなって言いたいんだろ。
それでも、例えばこの傷だらけの体でどこかで動けなくなった時に、この寒空の中、近くに気付ける人がいなかったらとか考えないのだろうか。
"第一、オレ喧嘩強いんだってば。本気で取っ組み合いの喧嘩になったら千にすら負ける気しないんだけど"
……舐めたこと言いやがって。
今、昼飯さげたんだから、看護師とか早々来ないよな。
第一ここの看護師はよく教育されていて入る前は必ずノックするし。
ふっと笑ってリチェールの小さい体をベットに押し倒した。
一瞬恐怖の色を目に映して、俺を視界にとらえると、すぐ顔を赤くする。
「そうかよ。じゃあ俺から自分の体ひとつ守ってみろ。
声のリハビリも兼ねて頑張れよ、リチェール」
まって!と焦ったように口をパクパク動かすリチェールに唇を重ねた。
__________
「ほら、リチェール。ちゃんと嫌がってみろ」
ほんの1分で簡単に組み敷けてしまった小さな体を見下ろせば、悔しそうに膨れる。
こいつ本気でハイキック喰らわせようとして来やがった。
もちろん、こんな弱った奴の蹴りが入るはずもなく足首掴んで押し倒してやったけど。
………俺も大人気ないよな。
リチェールは、降参と言うように手を挙げて息をついた。
降参して欲しいんじゃなくて、危機感を持ってくれって話なんだけどな。
リチェールの体を起こして、「反省しろよ」と言えば、反抗的に短い舌を突き出して来る。
「てっめ……!」
もう一度押さえつけて、その生意気な舌を絡めとれば、未だに痛むのかビクッと暴れ出した。
それでもしつこく虐めて口を離すと、涙を浮かべて、とろんとした表情で見上げて来る。
「っは。本当にこのまま最後までしてやろうか?」
そう言うと、リチェールが恥ずかしそうに顔を赤くしてぎゅーっとしがみついてくる。
なに。これ、誘ってるだろ。
さすがに病院で最後までする気はないし、リチェールもあんなことがあった後で体も辛いだろう。
テーブルのノートに手を伸ばし、サラサラと何かを書いて見上げて来た。
"嫌なこと全部忘れさせて、千"
まさか、本当にキスぐらいでその気になるとは思わなかった。
____いや、リチェールの今までのパターンからしたら、汚いから触らないでとか腹立つこと言い出すか………ヤられた感覚忘れたいから抱いてと言うかのどちらかだ。
今回は前者だと思ってたけど、後者だったようだ。
「痛かったりしたら言えよ?」
俺の言葉に、リチェールは小さく頷いた。
細い首筋に舌を這わせ、服の中に手を忍ばせウエストを撫でると、びくっと体を反らせる。
たったこれだけで、今までなら声を漏らしていたのに。
そう思うとすこし胸がいたんだ。
俺が付けた覚えのない跡をみつけ、仕方ないと思っても、チリっと疼く。
「─────っ!」
カリっと噛むとリチェールが痛みに耐えるようにぎゅっと俺の服にしがみつく。
表情を見れば、少し怖そうではあるものの抵抗は弱い。
そのまま胸の突起をピチャッと吸い上げればビクンっと体を揺らした。
そのまま敏感に反応するそこを舌で弄ってるとパシパシと肩を叩かれた。
顔をあげるとリチェールが泣きながら俺から逃れようとする。
「怖いか?」
目尻の涙を舐め上げると、リチェールの小さな両手に顔を捕まれ、目を合わされた。
か お み せ て
パクパク動く口が音もなくそう伝え、唇を重ねられた。
そう言えば、最初の頃は少しでも顔をみれなくしたらすぐ怯えて泣いていたし、未だに顔の見えないバックは苦手のようだ。
短い舌を絡めとって深く口付けると、びくびくっと少し痛そうに目から新たな涙を流し、唇を放すと、はぁっと苦しそうに息を吸い込む。
こいつキス下手だよな。
それが可愛いなんて、俺もどうかしてる。
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