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リチェール
リチェールside
本当は、千に体を触られることが少し怖い気もした。
言葉にしたら怒られるから言わないけど、自分の体がすごく汚く思えて大好きな千に触られることがすごく悪いことのような気がして。
そう思うのに、ずっとまとわりついて離れなかった父さんの指や舌の感覚が千が触れた所から優しく消えていくようで気が付けば自分からキスを求めていた。
千は優しいし、俺様だけど常識人だから、なんだかんだ言ってオレが反省したら最後までせずにやめるつもりだったんだろうって思う。
「……………っ」
優しい愛撫に達してしまい、千の手のひらに性を吐き出した。
睡眠も食事も疎かだったから、たった一回達しただけで、くらくらと目が回る。
その様子を見てか、千がやめるか?と優しく尋ねてきて首を降った。
「無理するなよ」
どこか切なそうに笑って、長い指がぬるっとオレの中にさっき出したものを塗り込んできた。
乱暴にされた傷が少しだけ痛んだけれど、すぐに快楽にかわり呼吸が乱れる。
千はそもそもエッチの時あまり喋らないし、オレもこんなに感じてるのに声が出なくて、静かな病室にピチャ、クチャと卑猥な水音だけが響いて恥ずかしい。
「リチェール、感じてないでちゃんと反省しろよ?こんなにしても声が出ないんだから一人で行動するな」
千のバカ。まだ言ってるし。
たまたま重なっただけで、なんで男のオレが危ないって思うの。
でも、千にそんな顔されるのなら言うこと聞くべきなのかな。
「────っ」
千の指が一点をかすめ、体がびくっと反ってしまった。
千を見るとふっと薄く笑ってそこばかりを、指を増やして弄ってくる。
まって、とも言えないもどかしさに、ひたすら千にしがみついて耐える。
激しく動く指にまたイきそうになった瞬間ずるっと指を抜かれた。
「…………?」
なんで?
いけなかった苦しさに泣きそうになりながら千を見上げると、カチャカチャとベルトの外す音が聞こえてドキッと息を飲んだ。
「いれるぞ」
オレの顔色を伺うように見つめて、優しく唇を重ねられた。
優しい刺激にまた頭がぼーっとしてきた瞬間、父さんとは比べ物にならない圧迫感が押し当てられ、悲鳴をあげた。
千のは、本当に大きくてこんなに優しく解されたあとでも、入ることを抵抗してしまう。
「─────っ!」
それでも無理に奥に入れることはせず、優しく少しずつ進む千は少し苦しそうに笑った。
「っリチェール、力抜け。全部いれてぇ」
いつもより余裕のない笑みに、ぞくっと体が疼く。
圧迫感が苦しくて仕方ないけど、オレも千を受け入れたくてゆっくり息を吐いた。
「全部入った。痛くないか?」
オレのことを気遣ってばかりの問いかけに首を降る。
痛いような気もした。それより苦しい。
けれど、苦しいだけじゃない気持ちよさも確かにあって、体は敏感に快楽を求めていた。
「は。惚けた顔しやがって。他のやつに見せんなよ」
「────っ」
吐き捨てるように言われた瞬間、千が激しく動き始めた。
声が、出なくて今はよかったと思う。
きっと我慢できなかった。
「───っ!」
押し寄せる激しい快楽に千の服にしがみついてひたすら身を震わせた。
だめ………っいく………っ!
限界を感じて、千に少し腰を緩めてほしくてバンバン胸を叩いたけれど、千はオレの膝を肩に抱えて大きく開き、さらに奥を突かれた。
「────っ!─────!」
簡単に達してしまった体は、それでも止まらない激しい動きに悲鳴をあげる。
やだ、もう止まって、と叫びたいのに声にならないもどかしさに涙がたまった。
「……っく……!」
千の余裕のなくした声と同時にさらに激しく動かれ、目がチカチカする。
「──────っ!!」
中に温かいものを感じた瞬間、オレもまた達してしまい、千に体をぎゅーっと抱き締められた。
「っはぁ、リチェール、愛してる」
遠退く意識の中、千の優しい声だけがぼんやり頭に響いた。
「_______」
オレも、愛してる。
あなたにそう伝えたいのに、声は出なかった。
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