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リチェール
リチェールside
千がくれた言葉が少しずつ心を暖めてくれるようだった。
「ほら、リチェール。せん、って言ってみろ」
大きな手がオレの顔を包み込んで優しく頬にキスを落とす。
声なんて、出ないのに。
もう出なくてもいいやって思ってたのに。
オレの言葉はあなたにとって不幸へ手繰り寄せるような呪いの言葉になっただろうに、千はこんな声を聞きたいと言う。
全部嬉しかったって。
「ほら最初は、せ」
「……__っ」
「次は、ん。千って呼んでみ」
呼びたい。
こんな声でも、あなたが求めてくれるなら。
「___せ……ん」
ぽろっと出た言葉が空間に響いて、一瞬時間が止まった
驚いて口元をパッと押さえる。
千を見ると、目を見開いてオレを見ていた。
「リチェール、今……」
やっぱりオレの勘違いじゃなかったんだ。
ドキドキしながら、ゆっくり手を外して息を吸った。
「千、聞こえる?」
言葉が声になって出ていく。
その瞬間、千がすごく穏やかな顔で微笑んだ。
「聞こえてるよ。もう一回俺の名前呼んで」
千の顔見てると、オレの声くらいでこんなに優しい顔してくれるんだって、ぎゅうって胸が締め付けられて、涙が目にたまった。
「……千、愛してる」
"僕のこと、愛してるって言えよ!エリシア"
父さんの辛そうな顔が頭によぎったって、喉にズキっと痛みが走った。
そんな痛みを忘れさせてくれるように、大きな腕がオレを包む。
「俺も。愛してるよ、リチェール」
その言葉に、胸が少しだけ痛んで暖かい余韻を残す。
同じ言葉でもどうしてこうも温度が違うんだろう。
____ねぇ、父さん。あんなことになる前に、オレがあなたに何か違う言葉をかけれたら結果は変わっていたのかな。
オレの心が救われたように、ずっと苦しんでる貴方達二人の心も救われたらって思うよ。
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