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イギリス
病院終わり、適当に入ったお店でブランチを食べ終わると千がオレの食べた量を見てほっと息をついた。
「頼むからこれ以上は細くなるなよ。折れそうで怖い」
「でも今日はいっぱい食べたよー?」
「えらいな」
「でしょー?だから、午後からもホテルで寝てないで千と行動していいよね?」
「はいはい」
仕方ねぇな、と笑われて胸が暖かくなる。
ここはイギリスで千を知る人はいない。
だから目一杯千にベタベタできて、こんな状況だけど、一緒に過ごせれることが嬉しい。
「グレッグ叔父さんとの約束何時なのー?」
「もうそろそろ。あっちの家に行くことになってる」
「あー、まぁ近いしね」
叔父さんとは最後にあったのいつだったかな?
少なくとも、父さんに母さんの代用品にされる前だったと思うけど、家族ごとよく思われてないから、少し緊張する。
「グレッグ叔父さんにオレのことわかるかなー。最後にあったのかなり前だよー」
「へー。いつくらい」
「4、5歳くらいだと思う」
ぼんやり記憶をたどりながらそう言うと、千が小さくため息をついた。
「あー、やっぱ会わせなくないかも」
「え?なんで?」
キョトンと首を傾げると、千に鼻をきゅっと捕まれる。
息苦しさに、う、と呻くとすぐ笑って手を離された。
「リチェールが可愛いから。
やっぱり引き取りたいとか言われたら厄介だろ」
「もう。おちょくらないでよー」
顔が赤くなるのを誤魔化すように笑う。
オレのこと可愛いって言うの千くらいだっての。
「グレッグ叔父さんとなに話すの?」
もう千がオレを引き取ってくれるという話ついて、変える日程まで決まってるのに。
「リチェールが18になったら、戸籍を俺の方に移すけど、書類上ではそれまでのイギリス保護者になってもらうわけだからその話と、日本でリチェールのことは俺に一任することを一筆書いてもらう。……それとリチェールの親の話も少しな」
「オレのことなのに千に任せっきりでごめんね?」
「リチェールのことだから俺がやるんだろ」
「んん……っ」
恥ずかしさと嬉しさが混ざって、押し黙ってしまう。
なんで千って、たまにこう言葉がストレートなんだろう。
「と、父さんと、母さん。どうなるの?」
「父親の方はしばらくでられねぇだろうな。イギリスは日本より児童虐待に厳しいらしい。
出られたとしてもリチェールにはもう関われないよ。
母親は今難しいところ。直接手をくわえなかったとしても、黙認してたわけだし」
「そうなの」
病院でも少し聞いたけど、自分から聞いといて、イチイチ気持ちが落ちてしまう。
オレは千といられたら他になにも要らないくらい幸せだし、決して二人に仕返しがしたいわけじゃない。
当時は苦しかったし、未だに思い出すと怖くて仕方ないけど。
全部、全部、呑み込めれる。
だって、親だから。
不幸にはなってほしくない。
母さんにはオレを身代わりにしてあんなに拘ってた仕事を放り出してまで貫いた恋愛なら最後まで突き通して欲しいし。
父さんにも、もう母さんのこともオレのことも忘れて穏やかな生活をおくってほしい。
オレに乱暴してる父さんが、一瞬だけみせる父さんの泣きそうな顔が今も残って胸を締め付ける。
きっと、父さんも母さんもそれぞれ辛かった。
だからもうオレのことは忘れたっていいから幸せになって。
オレはもう幸せを見つけられたから。
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