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あの日の母と子

リチェールside 母さんと別れてホテルに戻ると千をベットに押し倒してその胸にぎゅーっと抱きついた。 「よく頑張ったなリチェール」 頭を撫でられ、ほっと息をつく。 千が隣にいてくれたから、素直になれた。 「千のおかげだよ。会わせてくれてありがとう。もう心置きなく離れるよ」 少しの寂しさは残るけど。 ああ、やっぱりさ、どんなに関係が冷めきってたって、子供にとって母さんって母さんなんだと痛感させられる。 どうしようもない寂しさを埋めるように千に甘えた。 「千、ちゅーして?」 「はいはい」 ふっと笑って体をごろんと反転させると千が妖艶に笑う。 キスをねだるように口を小さくあけると、深く重ねられた。 「ふ………ぅ、ん」 ぴったりくっついた千の体が暖かくて気持ちいい。 ゆっくり唇を離されて、少し寂しくて千の服をぎゅっと握った。 「や……っ千、ちゅう…」 やめないで、と引き寄せて自分から舌を絡ませる。  まだ少しぴりぴり痛みがなぜだか安心感を与えてくれる。 「お前なぁ、襲われてぇのかよ」 「……うん、千が、いやじゃなかったら、抱いて?」 言い様のない寂しさを埋めるように甘えると、千がクッと少し困ったように笑う。 「寂しがり屋」 耳にちゅっとキスを落とされビクッと体が震える。 千はたぶん、全部見抜いてる。 わかってて、ずるいオレを甘やかしてくれてるんだ。 「リチェールが残りたいって言い出さないかひやひやした」 「そんなこと言うわけないじゃん」 コツン、とおでこをくっ付けられドキドキする。 千の顔、未だに綺麗すぎて近くにあると緊張しちゃう。 「ま、言ったところで連れて帰るけど」 「ん……っ」 首筋に舌が這い、千の手が服に滑り込んだ。 千の甘い香水の匂いにくらくらする。 千がいなかったら、ためていた母さんへの言葉を素直に言えなかった。 千の存在がどんどんオレのなかで大きくなっていく。 オレだって、寂しいからこうして千に甘えるし。 自分を守るために母さんに冷たくあたってしまうことだってあった。 だからね、母さん。 オレ達おあいこなんだよ。 オレの言葉だって何度も母さんを傷付けたよね。 無表情だと思ってた母さんのちょっとした表情の変化に気づく余裕が今までオレになかった。 もっと早く気付いてたら母さんの心に寄り添えたかな。 「リチェール。なに考えてる?」 「……え……っ……ぅ……」 念入りにならされたそこに、千が深く入ってくる圧迫感に頭が真っ白になった。 「リチェールから誘ったんだろ。 他のこと考えるな」 「ぁんっ………や、ぁあ………っ」 体を揺さぶられ、目がチカチカする。 千も少し余裕が無さそうに笑ってた。 こうやって、苦しいところからオレを連れ出してくれる千の温もりだけを感じて、目を閉じた。

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