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お迎え

リチェールside 飛行機の中でもずっと泣きっぱなしだったオレの手を千はずっと握ってくれていた。 気が付いたらいつのまにか寝てしまっていたらしい。 ガタンっと着地する揺れでビクッと目を開けた。 隣を見ると、千が窓を見ていて繋いだままの手を引っ張ると振り替えって穏やかに微笑んだ。 「起きたか」 「ごめんね。オレだけ寝てたー。千はずっと起きてたの?」 「いや?少し寝た」 地面を走るスピードがどんどん緩やかになり、日本の到着を知らせるアナウンスが流れた。 「……また来年イギリスにいこう」 「え?」 「もちろん、俺もついていくし、親父さんに会わせるのはまた状況を確認して決めるけど、来年また会えるんだから」 千が優しくオレの頬を撫でて、少し切なそうに笑った。 「そんなに寂しそうな顔するな」 周りが早く降りようとざわざわと騒がしくなる。 オレは動けず固まっていた。 あんなに大変な目に会って、絶対にもうオレの親となんて関わりたくないだろうし、法的にももう会うのは難しいはずなのに、千はどこまでもオレの心に寄り添ってくれようとする。 「千、オレ………千が一番だよ? 父さんや母さんはたしかに特別だけど、特別だって思えたのは千がオレの心を救ってくれたからだからね?」 「俺が一番なのは当たり前だろ」 ふん、と偉そうに笑う千に気持ちが軽くなる。 そこは大前提なんだってクスクス笑うとほとんど人がいなくなった機内で千が立ち上がった。 「いくか」 差し出された手に自分のものを重ねる。 「うん」 オレの居場所はもうずっとここだよね。 荷物を受け取ってスマホの電源をいれると、千がきょろきょろと周りを見渡した。 「どうしたのー?」 「……佐倉が迎えに来てるみたいだな」 「え?雅人さん?」 ってことは。 「ルリー!!!」 大声で名前を呼ばれ顔をあげると、人混みを掻き分けて純ちゃんが突進してきた。 「純ちゃ………っうわ!」 はじめて純ちゃんから抱き付かれ、まだ万全じゃないオレの体は後ろに傾いたけれど、千に支えられなんとか倒れることは免れた。 「こら純也!走るなっての!」 その後ろから、雅人さんが焦ったように早足に追いかけてきた。 「えっ……えー?」 あのツンデレな純ちゃんがぎゅーっとオレに抱き付いて離れない。 嬉しいけど、どうしたの? 躊躇いながらも、オレも純ちゃんの体に手を回して、なんで?と雅人さんを見上げた。 「ルリくん死にかけて数日目ぇ覚まさなかったんでしょー? 千くんから聞いて純也に言うつもりなかったんだけど、電話の内容聞こえちゃったみたいでさー」 「え、や、死にかけたなんてそんな大袈裟な話じゃないよー?」 オレの服に顔を埋めてなにも言葉を発さない純ちゃんに、慌てて誤解を解く。 オレは死ぬつもりだったけど、そんなに大した怪我でもなかったのに。 「純ちゃん、オレ生きてるよー?めちゃめちゃ元気だからねー?」 あの純ちゃんから抱き付かれるのはもちろんすごく嬉しいけど、なんだか純ちゃんが泣いてる気がして、悲しい気持ちになってしまう。 「………心配させんじゃねぇよ」 顔をあげた純ちゃんはやっぱり少し目は潤んでいて、オレが泣かせたみたいで動揺する。 「また細くなりやがって!こんな傷までつくって!! 次舐めた真似したら縛り上げて監禁するからな! ……………月城の家に!!!」 最後ちらっと千の顔色伺ったのがどうしようもなく可愛い。 あとたぶんこれって雅人さんに普段言われてる言葉なんだろうな。 心配してくれてるはずなのにこんなに言葉が乱暴で、もうキャンキャン吠えるチワワのようだった。 「可愛い……」 「ああ!?なに舐めたこと言ってんだよ!?俺は怒ってんだよ!」 「うんうん。ごめんねぇ、心配かけてー。大好きっ」 ぎゅーっと純ちゃんを抱き締めると、口では色々騒ぐのに、抵抗しないのがまたさらに可愛く思えて仕方がない。

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