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痛感

すぐにシャッとカーテンは開かれ、ルリくんは顔を壁側にむけて、深く毛布を被っていた。 僅かに覗く耳は真っ赤で、それが熱のせいだけじゃないとわかってしまう。 先生、ルリくんことやっぱり思い出したの? ルリくんとは本当に特別な関係だったの? どんどんどんどん不安が募って、呼吸が苦しくなっていった。 「とりあえず、熱下げて少し落ち着いたら車で強制帰宅だな」 まだ表情の険しさはあるけど、少し機嫌を直したように見える。 「あー、まぁ、なんだ、その。ルリの我慢してた事情とかちゃんと聞いてやれよ」 「お前はつくづくリチェールに甘いな」 黒髪の子が少し顔を赤くして目をそらしながら言うと、先生はふっと鼻で笑った。 もう一人の身長の高いルリくんの友達はルリくんのベットに寄って冷えピタを貼ったり、汗を拭いたりしてる。 「そもそも今回の熱って、純也の留年問題で心労がたたったんじゃね?」 「留年してねぇし」 「だから、テストそこそこ解けたのルリがギリギリまで見てたおかげだろ。お前がアホすぎて負担かけてんだよ」 「うるさいな!ルリは俺の勉強見ることが趣味みたいなやつなんだからいいんだよ!」 やだな、この部屋中がルリくん中心な感じ。 先生がとられると思うと、すごく怖くて、息が苦しくなる。 ルリくんの友達がたくさんいるのも、怖い。 あの黒髪の彼は僕のことよく思ってないし、怒鳴られたことも睨まれたこともある。 こわい。すごく、こわい。 喉が焼けるように痛くて、息が苦しい。 「原野も佐久本もあんまりリチェールを甘やかすなよ。俺が大変なんだから」 「いやなんだかんだ言って先生が一番甘やかしてるでしょ?」 「ってか、甘やかすも何もルリってこんな性格だし」 息が吐けなくて、吸うばかりになってしまう。ひゅっひゅっと喉がなり、その場にうずくまった。 「……折山?大丈夫か?」 ようやく気付いた先生はすぐに駆け寄り優しく背中を撫でてくれる。 紙袋が口にあてられて、先生にぐったり寄りかかった。 「あー、俺ら、退散するか。今大変そうだし」 「俺はルリといる」 「だめ。いくぞ純也」 長身の男が黒髪の男を連れ出そうとしてくれて先生と二人きりになると思うと少し落ち着く。 でもまだ息が苦しくて、先生にすがるように服をつかんだ。 「折山、大丈夫だ。息をゆっくり吐け」 優しい先生の声がすぐ近くで届く。 ほら、先生は僕にはこんなにも優しい。 「あー、まて。原野か佐久本どっちか残ってリチェール見てくれ。今なにか聞こえた」 そしてまた、先生のひどい台詞で息苦しさが増した。 頭が、クラクラしてくる。 「俺が残る」 「えー。俺が残った方がいいんじゃない?純也短気だし」 「だめ、俺が残る」 「んー、先生、純也置いてっていいの?」 長身の男が困ったように先生に話をふると、先生は短く「ああ」と答えた。 ルリくんを他のひとに見せて、先生は僕についていてくれる。 やっぱり先生は僕を優先してくれてるんだ。 そう思いたいのに、胸が痛くて、苦しい。 結局この過呼吸は長く続き、落ち着いた頃には目眩もしてルリくんの隣のベットに寝かされた。

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