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痛感

リチェールside ぼーっと何度も夢と現実の間を往復する中、額に触れた冷たいものの感覚にゆっくりと目を覚ました。 「起きたか」 ぼやける視界では千が眉間にシワを寄せてオレを見下ろしている。 手には透明のフィルムが持ってるから、冷えピタを交換してくれたんだと思う。 「オレ、どれくらい寝てた……?」 「二時間くらい。体調は?」 不機嫌そうに言われて、やっぱり怒ってるよなぁと反省する。 累くんにもう保健室に行かないと言った手前絶対行かないと体調悪いことに気付きつつも意固地になりすぎて倒れるなんて、迷惑極まりない。 「さっきより全然いいよー。累くんは?」 「寝てる」 「……そう」 無意識にほっと息をついて、目を閉じた。 千が累くんを相手してるのに、オレばかり気にかけるから、正直ヒヤヒヤした。 千が心配性なのわかってて倒れるまで黙ってたオレが悪いんだけど。 こんなことなら今日は休めばよかった。 「千、ごめんなさい」 「本当に反省してるのかお前は」 声色は怒ってるのに、ベットに腰を下ろして優しく撫でてくれる千に胸がぎゅっとする。 「千の手、きもちい……すきー」  ふーっと息をつくと、パッと撫でるのを止められてしまった。 「じゃあ撫でてやんない」 「えー、なんで?」 「怒ってるから」 熱があって、人肌恋しくなってるのかな。 すごく寂しい。 出来ることならずっと撫でてほしかった。 千に撫でられると、体も楽になる気がする。 「せんー。お願い。さわって」 「お前ほんと今の自分鏡で見てから言葉使えよ?」 はーっと千が呆れたようにため息をつく。 いってる意味がわからなくて、自分で千の手を掴んでほっぺたにくっつけた。 「気持ちいいの?」 「うんー」 ふっと千が色っぽく笑う。 もちろん解熱剤のお陰もあると思うけど、千がそばにいるとどんどん体が楽になるから不思議。 やっぱり安心するからかなぁ。 ちゅーしたいな。 熱がうつっちゃうから、無理だけど。 「物欲しそうな顔しやがって。襲われたいの?」 「も、ばか!」 意地悪く笑う千に顔が余計に熱くなる。 顔に出てたのかな。 でも、なんだか本当に少しでも触れてほしかった。 今は千は仕事中だし、こんな感情絶対熱のせいだ。 「今日は熱がうつっちゃうと悪いから、自分の家に帰るねー」 「お前ね。何回同じこと言わすわけ?俺ん家に連れて帰るに決まってんだろ」 それは嬉しいけど、明日は休みじゃないしうつったらどうするのって思う。 「千の甘やかしん坊さん」 「そうでもねぇよ。熱だからってお仕置きが免除されると思うなよ?」 黒い笑顔を浮かべる千に、顔がひきつる。 無理したら千が怒るのは毎度のことなのに、本当に学習しろよ自分。 「今日は職員会議があるから、ここで寝て待ってろ。 鍵かけて出るけど誰も入れんなよ?」 「うん」 「……鍵かけて出るけど、誰も、入れんなよ?」 なんで二回言うの?一回でわかったし。 こくこく頷くと、千が頭を撫でて、ちゅっと触れるだけのキスが落とされた。 びっくりして千を見上げると、ふっと笑われる。 「キスしたかったんだろ?」 ああ、もう。オレはこの人には一生敵わない。

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