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痛感

「累くん、ちょっと落ち着きなよ。オレ、せんせーと付き合ってなんかないし。 オレが嫌なのはわかったけど、そんなこと言いふらしてせんせーがクビになったりでもしたらもう累くんもせんせーに会えないんだよ?」 起き上がって、また散らばってしまった破片を集め始めた。 ぽたっと汗が伝って、熱で頭がボーッとする。 ああ、横になりたい。体を起こしてることさえ、きつかった。 「っどうしてすぐ脅すの………っ!?」 ぼたぼたと涙をこぼす累くんに、ちょっと待てと言いたくなる。 どうしよう。 ここでオレがうまくやらなきゃと思うのに、イライラが募っていく。 「脅しとかじゃなくてね。 ……てか、今日だって累くんのこと優先してたじゃん。 オレの看病してくれたの純也だし」 「うるさいうるさい! 僕は騙されない!あの口の悪いやつもぐるなんでしょ!」 ぐるって、なにその子供っぽい思考。 いっぱいいっぱいなのはわかるけど、せめてオレがもう少し余裕がある時に爆発させてほしかった。 「月城先生の特別は僕だけだもん!」 放課後だし、この学校はみんな必ず部活動に在籍しなきゃいけないし、職員室までは遠い。 それに、千がすごくモテることは有名だし、それを相手にしないのも有名。 だから大丈夫だとは思うけど、声の大きさに一々ヒヤヒヤしてしまう。 前まではオレなんかが千に大切にされていいはずがない。もっと素敵な人と幸せになってほしいと思ってたはずだ。 それなのに、今はもう累くんは千に関わらないでほしいと思えてしまう。 千のためも5割、嫉妬も5割。 オレも人のこと言えないくらい子供っぽいけど。 「ルリくんは男の人に乱暴されたくてわざと今日みたいことしてるんでしょっ! そうしたら先生が構ってくれるもんね! 先生がルリくん構うのは、そういうことするからなんだから!!」 そんなことは、もうずっと前からわかってる。 オレが弱いから、千の心配を独占してしまってるって。 わかってる。 オレだって、好きでこんなに情けないくらい弱いんじゃない。 グラッと熱で視界が歪む中、ガラスを持つ右手をぎゅっと握ると、そのまま後ろの壁をバァン!と殴り付けた。 大きな音が響いて、累くんがビクッと押し黙る。 手に走った鋭い痛みに、意識を取り戻すと、キツく累くんを睨み付けた。 「さっきからなに。喧嘩売ってるなら買うけど」 さっきよりもずっと苦しくなった呼吸を整えるように息を吐くと、累くんは真っ青な顔で泣きながら硬直してしまった。

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