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コタツ
雅人は、俺にずっとそばにいてって言ってくれるけど、俺と雅人が離れる時は、雅人が俺から離れていく時だと思う。
そしてそれはきっと遠くない未来なのだろう。
ただ、今は、もう少し。
もう少しだけ雅人に甘やかされていたいと思う。
「もしもーし、久しぶり~どうした?」
寝れずにぼーっと横になっていたら、リビングから雅人の声が聞こえた。
電話?こんな時間に?
「ええ?今から?いや……うーん。……は?」
聞く気はないけど、聞こえてしまう会話に思わず神経が集中してしまう。
「もう来てるの?今っ!?」
雅人がそう言った瞬間、ピリリリリとエレベーター下のチャイムがなって、え?と体を起こした。
「あー、もう。朝イチで帰ってもらうからね」
雅人は呆れた声を出しながらも応じるようだ。
どういうこと?誰か来たの?
てか、俺どうしたらいいの?
しばらくドキドキしながら音に集中してると、足音が近付いてきて、再び毛布のなかに潜り込んだ。
キィと、ドアが開いて雅人が入ってくるのがわかった。
「純也、起きてる…?」
そっと前髪をどかされたけど、狸寝入りを決め込んで反応はしなかった。
「あのね、起きてたら聞いてほしいんだけど、今俺の妹が来たみたいで、行くあてないみたいだから一日だけ泊まらせるね」
妹?なんとなく、一人っ子だと思ってた。
一緒にすんでても、家族がいる雰囲気はなかったから。
てか、ここは雅人の家なんだからイチイチ俺に言う必要ないだろ。
なんなら、今からでも出ていくし。
そう思うのに、寝たフリをした手前なにも言えない。
しばらくしてピンポーンと、家のインターフォンもなり雅人が離れていくのを感じながらまた深く毛布を頭までかぶりこんだ。
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