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コタツ

エレベーターから降りると、そのまま大通りまで走り抜けて、ルリに電話をした。 「もしもし純ちゃん?」 「ルリ、今どこ?」   ほんの2コールで繋がり聞こえてきたルリの穏やかな声に気持ちが落ち着いていく。 「今、千とそっち向かってるよー。 なんか純ちゃん弱ってるみたいだから、あとで雅人さんには千に連絡してもらおうね。どうせこっそり出てきちゃったんでしょー?」 何でもお見通しというルリに、気持ちが楽になる。 こっそり出ようとして失敗して暴言を浴びせて出てきたんだけど。 自分から離れといて、今あの雅人が亜夢さんと二人っきりということに今更モヤモヤしてくる。 「ルリ、早く会いたい。てか寒い」 「あはは。純ちゃんがめずらしく素直ー。よっぽど嫌なことがあったんだねぇ。 会ったらぎゅーってしたげるねー」 そんなことして月城の嫉妬買うのとか勘弁だっての。 まぁルリは割りと誰にでもベタベタ引っ付くけど。 大通りに出たことは正解だったらしく、すぐに車で月城とルリが迎えに来てくれた。 「やっほー。純ちゃん。寒かったでしょー?今日はぎゅーってして寝ようね!」 ルリが助手席から降りて俺と後部座席に移って、ぎゅーっと抱き寄せられた。 ちらっとルームミラーを見ると、月城と目があってしまいすぐにそらしてルリを離した。 「ひっつくな!」 「えへへー。純ちゃんが可愛いからついねー」 ふにゃっと柔らかく笑うルリに方の力が抜ける。 中性的な優しい声も、甘い匂いも、全部に安心する。 ルリは癒し系だと思う。 ………でも、雅人の傷付いた顔がいつまでも頭から離れない。 月城の家につくと、月城は気を使ってくれたのかさっさとお風呂にいって、ルリがココアを二ついれてソファにならんで座った。 「で、雅人さんと何があったのー?」 なんで雅人限定なんだよ!と言おうと思ったけど、その通りだから癪だ。 俺自身、誰かに聞いてほしくて、ポツポツと亜夢さんのことを話始めた。 俺の話を聞き終わってココアを一口飲むと、ルリは呆れたようにため息をついた。 「あー、なんでそこで暴言吐いちゃうかなー」 本当に、なんで俺あんなこと言ってしまったんだろう。 今さら後悔したって遅いけど。 「つまりさぁ、純ちゃんそれ焼きもちじゃん」 「は?ちげぇよ」 「ちがくないでしょ」 違うに決まってるだろ。 俺も雅人も男だぞ。 こいつの前でそれは言えないけど。 「じゃあさ、今雅人さんと亜夢さんがちゅーしてても純ちゃんはなんともないわけ?」 「は?」 雅人と、亜夢さんが? 言われて目の前が真っ暗になる。 たしかにあり得ない話じゃない。 亜夢さんは雅人のこと好きだと言ってたし、血も繋がってないらしいし。 「______っ」 あり得ない話じゃ、ないんだ。 「あー、ごめん、純ちゃん。 今のはオレが意地悪だったねー。そんな顔しないで」 ルリが困ったように笑って頭を撫でてくる。 どんな顔をしてると言うのだろう。 俺も俺で、なんでこんなに落ちこんでんの。 「………雅人と、亜夢さんがどうなろうと、どうでもいい。 ただ、そうしたら俺は出ていかなきゃいけないからそれが、嫌なだけで……」 「なんで?」 「別に一人で居たくないだけだ。だれだっていいんだよ」 そんなことない。雅人のそばがいいとはっきり思える。 ただそれが恋愛感情だなんて思えない。 雅人が優しいから、そばが心地いいだけで。 「じゃあさ雅人さんの家でて、オレん家でオレと二人暮らしする? それなら雅人さんと亜夢さんがどうなろうといいの?」 「それは……」 ルリとなら居心地もいいし、ルリだって俺を優しく甘やかしてくれるだろう。 それにルリなら雅人以上に俺を捨てないって信用できる。 でも、雅人が俺を撫でた手で亜夢さんに触れると思うと、胸がいたんで苦しい。 「………雅人さんが好きなんでしょ。 そんな泣きそうになるくらいなら意地なんてはらなきゃいいのにー」 ルリが俺の頬を両手で包んで額をくっつけてくる。 ルリのそばこんなにも心地いい。 ずっと平穏にいられる気がする。 雅人といると、心臓がいたくて、うるさくて、とても平穏にはいられないけど、そばにいたいと思う。 そう思うと、考えるより言葉がポツッとこぼれていた。 「好き………かもしれない」

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