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コタツ
車に乗ると、突然雅人がぎゅっと俺を抱き寄せた。
「うぜぇ!引っ付くな!」
ドキドキしてることをバレたくなくて振り払おうとするけど、力が強くてかなわない。
「ははっ。ほんと純也元気になってる。ルリくんパワーすごいね。
お母さんと何かあるたびこうしてルリくんに頼られるならほんと早急になんとかしなきゃなー」
だから俺が出ていったのは、そこじゃないというのに。
「……まだ亜夢さんのこと聞いてないから帰るって決めた訳じゃねぇからな」
「こだわるね、純也」
困ったように笑って体を離すと、雅人はようやく車のエンジンをかけた。
それから運転しながらぽつりぽつり話始めた。
「俺ね、両親が交通事故で他界して施設育ちなんだよね」
ルリが予想した何通りかの一つと重なりドキッとする。
じゃあやっぱり亜夢さんは雅人と血のつながりはないんだ。
それから、こいつに浴びせた言葉がどれほど残酷だったかも、今更痛感した。
「最初は寂しかったけどさ、施設のみんないい人たちで家族だと思ってるし、亜夢のことも正直妹としか見れないからどうしていいかわかんないんだよね」
「……昨日、亜夢さんはやっぱり泊まったの」
「うん?そうだね。でも俺は可愛い子猫が逃げ出したからその事で頭がいっぱいでほとんど放置しちゃったけど。朝一番に施設に届けてきたよ」
「……………雅人は」
本当に亜夢さんのことなんとも思ってないの?
そんな女々しいこと恥ずかしくて言えない。
もっと雅人の話を聞きたかったけど、両親が亡くなってるなんて話、掘り下げていいのかわからず黙り混んでしまった。
「純也はさ、本当にルリくんのこと恋愛感情じゃないの?」
「あ?」
なんでルリにばっかり拘るんだこいつは。
「なに言ってんだ気持ち悪ぃ」
信号に引っ掛かることなくスムーズに進む車で、雅人はまっすぐ前を見ていて何を考えてるかわからない。
「だって、純也がだれかを頼るってかなり珍しくない」
「頼るってか、話を聞いて欲しかっただけだよ」
「それ俺じゃだめなわけ?」
なんでお前にモヤモヤする気持ちをお前に言うんだよ!
そう言えたらどれだけスッキリするか。
雅人は相変わらず母さんのことだと思ってるらしい。
説明しようにも恥ずかしく、うつむいてしまった。
本当は昨日のこと謝って、それからこの気持ちを伝えたい。
傷つけた分、ちゃんと少しでも気持ちを返せるように。
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