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コタツ
家につくと、どこか気まずいままお互い無言で部屋に入った。
そしてリビングに行っていつもと違う風景に目を見開いた。
「純也迎えに行こうとした時にちょうど届いてさ、設置してから来たら迎えるの遅れちゃった」
テレビの前にあるコタツに目を止める俺に雅人がヘラりと笑う。
昨日の約束を思い出して、胸が痛んだ。
俺はいつも自分のことでいっぱいいっぱいで、雅人にあたることだってあるのに、こいつはどうしてこんなに優しいんだろう。
「…………DVD借りに行く?」
切なそうに笑う雅人に息がつまる。
雅人だってつらいことたくさんあるはずのに、いつも俺のことばかりだ。
「雅人、昨日ひどいこと言って出ていってごめん」
「いいよ。それで純也が元気になったなら。次からは俺を頼ってほしいけど」
ふふっと冗談っぽく笑う雅人の服をちょこっと掴む。
それから、緊張して震える声を絞り出して口を開いた。
「亜夢さんが雅人のこと好きだって言って、耐えれなかった。
まだ恋人同士とか考えられないけど俺多分お前のこと好きだわ」
雅人の目が微かに見開かれる。
いった。俺は、言ったぞ。
まだルリたちみたいに恋人らしいことをする勇気はないけど、だれにも雅人をとられたくない、ダサい独占欲だけはしっかりある。
「……純也、ルリくんのこと好きなんじゃないの?」
こいつ、まだそんなこと言ってやがる。
俺がどれだけ恥を忍んで話したと思ってるんだ。
「だから、ルリが月城とキスしてよーがなんとも思わないけど、お前が亜夢さん撫でるのは嫌なんだから!そーゆーことだろ!ぐじぐじうるせーんだよ!」
そう言うと、普段はへらへらすかしてる雅人の顔がかあっと赤くなった。
え、と固まると、その瞬間抱き寄せられ顔を見れなくなる。
「抱き付くな!」
放そうと暴れても、苦しいくらい強く抱き締められ間違いなく俺の心臓の音は雅人に届いているだろう。
「やばい、すげぇ嬉しい」
「…………あっそ!」
「チューしていい?」
「だめ!」
残念、と雅人は全然堪えた様子もなくへらへら笑う。
ああ、うん。やっぱりキスとか考えられないけど、雅人に抱き締められるのは恥ずかしいけど嫌じゃない。
「てか雅人!この部屋寒いからとりあえずエアコンつけろよ!」
「どうせならコタツ使おうよ。
でもひっつきたいから純ちゃん俺足の間に座ってね」
やっぱり俺がいないと、エアコンすらつけないくらい寒さには強いくせに、コタツまで買ってさ。
ばかかよ。
ルリと月城と四人で鍋もできるようにと買った大きめのコタツに二人ではいる。
「てか離れろよ……」
「いーじゃん、純也寒いんだろ」
そう、うしろからぎゅっと抱きししめてくる雅人を払わないのは、寒いからだ。
そう自分に言い訳して、雅人の胸に背中を預けた。
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