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喧嘩とクリスマス

千に花束を投げ付けて、そのまま人混みを縫うように避けて走り抜けた。 そばを離れて、少し冷静さを取り戻す。 てか、ほんとガキかよ自分。 でもさ、だって、ムカつくじゃん。 オレばかりが千に頼りきりで守られきりなこの状況が。 とはいえ、アレはナシだろう。 オレだって千を守りたい。その気持ちに嘘はないのに、あれじゃ迷惑にもほどがある。 「はぁ……」 本来であれば、このまま戻ってごめんなさいと言うべきなんだろう。 でも、さっきの千の父親とのやり取りがやはりムカついて、もう少し子供っぽくいてもいいだろうと、そのまま千に『今日は自分の家に帰る』とメッセージを送信した。 すぐに既読がついて、『変なのに絡まれるなよ。家についたら連絡しろ』と返信が届く。 クソジジィってまでいったのにさ、千はやっぱり大人だ。 ていうか、オレは自分がこんなに子供っぽいとは思わなかった。 千といたら大人でいたいと思うのに子供っぽくなってしまうし、冷静でいなければいけないところで、感情的になってしまう。 明日はクリスマスなのに。 街中がイルミネーションに彩られ、行き交う人はどこか浮き足立ってる。 クリスマスにいい思い出なんかない。 ゆーいちたちの家にそう言うイベントの時は、寄らないようにしていた。 家庭で問題があることがバレないように。 だから、クリスマスには何をもらったとか、何を食べたとか、友達の話をウチも同じようなものだったと誤魔化すことしかできなくて、イベントの時期はいつも寂しかった。 だから、プレゼントとか、ローストチキンとか、クリスマスプディングとか、一番メジャーな真似事をなぞるしかできないんだ。 知らないから、今年から二人のクリスマスを作って行きたかったはずなのに。 千にとって、オレまでこの時期を最悪にする一人になってしまったんじゃないだろうか。 「はぁ……」 正直、腹立つし、千にだって思うところはある。 でもやっぱり今すぐ謝りに行って仲直りしよう。 ……一緒にクリスマス過ごしたいし。 『ごめんなさい。やっぱり仲直りしたいから、駐車場にむかっていい?』 そうメッセージを送信する。 オレ達の立場ってやっぱり対等にはなれないよね。 オレは千に救われたけど、千にとってオレはそんな存在にはなれないのかな。 オレは千を傷つけた男に文句の一つも言えない。 それがどうしようもなく歯痒くて、思わず舌打ちをこぼす。 千から『待ってる』と返信が入ると、嬉しい反面、どこか悔しい気持ちも混ざってしまう。 会う前に一度しっかり落ち着こうと、すぐ近くのトイレに入ろうとした瞬間、後ろから肩を捕まれた。 「い、いくすきゅーずみー!!」 「え?」 振り替えると、小太りの中年の男性が少し顔を赤くしてオレの肩をつかんでいた。

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