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喧嘩とクリスマス

「おじさん、警備員だって言っただろ? 今日は休日だけど、来てみたら迷子がいたから仲間に届けようとしてるんだよ?」 苦笑いを浮かべながら、目を泳がせる姿によりいっそう疑いが深まる。 「じゃあなんで今車から降りてきたの。車でその子に何したんだよ」 「……いや、ほら、車に社員証を忘れて、警備室に入らないし……それを取りに……」 「じゃあそれ見せて。あと今すぐその手放して」 「車を確認してもなくて……忘れちゃったのかなぁ……」 「先に手ぇ放せって言ってんだよ」 いつになく低い声と荒い口調で男と距離をつめようとするリチェールを手で制して、男を冷たく見下ろした。 「こいつの保護者です。 こいつにさっきしたことについて話したいので一緒に警備室まで同行させてもらえますか? 断るなら警察呼びますが」 狼狽える男に構うことなく距離を詰めると、顔を真っ青にさせ、子供の手を振り払った。 それからじりじりと2、3歩後退り、突然振り返って走り逃げようとした首根っこを掴み、足を思い切り払った。 「ぐぁっ」 どてっとその場に倒れたおっさんをすぐ手を捻り上げて押さえると、周りから悲鳴が飛び交う。 怯えた子供をリチェールが抱き上げて、「警備員呼んでください!」と声を張り上げた。 もがいて逃れようとするから、うつ伏せで倒れこむ肩を片足で踏みつけてさらに手を片手で捻り上げた。 「やめろ!!訴えるぞ!!!」 「なら警察呼べ。こっちとしてもありがたいからな」 汚いこの手がリチェールに触れたのだと思うとイライラする。 「ぐ…っぁあ!!いたい!!いだいいい!!」 掴んだ手をキリキリを上にあげると、おっさんが痛そうに呻いた。 「せ、千!!」 焦ったような声を出すリチェールにも余計に腹が立つ。 お前も、あんなことされといて庇ってんじゃねぇよ。 「道開けてください!」 「なんの騒ぎですか!」 野次馬をどかしながら二人の警備員が来て、取り押さえてる男を見ると、「またお前か!」と呆れたように怒号を浴びせた。 手を離すと、顔を隠すように男がうつむく。 また逃げようとしたのを一人の大柄な警備員が取り押さえた。

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