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気まぐれ
スマホをなんとなく触っているとセフレの一人から明日の夜会わない?と来ていた。
明日は特に予定も入ってないけど、その日の気分によって代わるから、"気が向いたらね"とだけ返す。
"つれない姫様だな"とすぐ返信が来て乾いた笑いが出る。
可愛いとか、綺麗とか、寒いことをよく言えるよな。
こいつだけじゃないけど。
それに比べて、草薙は断トツ寡黙でなにを考えてるのかわからない。
バーなんてやるくらいだから、社交的だし外面はいいのに、元々は僕の客という出会いだったからか、僕といるときはすごく静か。
必要最低限しか喋りませんって感じがたまに面白くないなって感じる。
「草薙、なんか面白いこと言ってよ」
「布団が吹っ飛んだ」
それダジャレだし。つまんないし。
会話は特に楽しくない。
でも落ち着く。それだけ。
「もー、草薙といてもつまんなーい」
「はいはい。店でならもう少し相手しますよ」
カチッとタバコに火をつけて、長い前髪を後ろに掻きあげて薄く笑い少したれ目なのが、なんだか妙にエロく見える。
「蒼羽さん、明日なんですけど……」
「明日?なんかあったっけ?」
「あ、覚えてないならいいです」
相変わらず、すぐ話を切り上げる。
ぼくも、いいと言われたからそれ以上掘り下げることはない。
だから気楽でいいんだよね、草薙は。
身をわきまえてるというか。
僕たちはセフレであって、恋人でも友達でもない。
するだけの関係なんだから。
「蒼羽さんって今セフレ何人くらいいるんですか?」
ふとそんなことを聞かれて、んー?と首をかしげる。
「さぁ?ワンナイトがほとんどだよ。
こう長く定期的に会うのは草薙くらいかな」
「じゃ、俺だけでよくないっすか」
「え、無理」
半笑いで答えると、草薙はどうでもよさそうに、そっすよね、とテレビに目をやる。
「まぁ、俺だけでってのは冗談として、松岡さんはやめといたほうがいいですよ。
あの人のお連れさんってたまに、様子がおかしいというか……」
「ふーん。草薙がこんなに止めるの珍しいから聞いてあげないこともない。今回だけね」
「そうして」
穏やかに笑って、僕の髪をさらっと撫でる。
草薙がこんなに他人とするのを止めるのは本当に珍しく、とはいえ僕の行動事態をやめさせようとはしない。
本当に松岡に問題があって、心配してるというこがうざくない程度で伝わって、こういう嫉妬とかなしの草薙の優しさは心地がいい。
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