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気まぐれ

草薙side タトゥーをいれようと思ったのは、ほんの気まぐれ。 当時修行させてもらってたbarのスタッフはほとんど入ってたし、当時付き合ってた彼女が、夏になれば海につれてけ、冬になれば温泉につれていけと、煩わしかったのもあって、タトゥーがあればいろんな場所に制限がかかるし、良い断り文句になるんじゃないかと思った。 左の肩甲骨あたりにワンポイントだけならと先輩の行きつけの店に行った。 出迎えた蒼羽さんという彫り師は驚くほど美人で、綺麗なひとだなって印象しかなかった。 そもそも俺は男と付き合う趣味はないはずなのに。 それが今ではセフレになってる。 蒼羽さんはヤり慣れてるし、女のような重たさもなくて、気が楽だった。 なによりお互い体の相性がよかった。 ほんの気まぐれ。 俺たちに特別な感情なんてない。 メリットもデメリットもない、楽な関係だった。 そうだったはずなのに、蒼羽さんがたまに逆上した他のセフレと揉めて、傷を作る姿に、段々と心配になってくる。 特別な人を作らないはずの蒼羽さんがつれてくる月城さんは他の人たちと違って特別扱いしてるのが目に見えてわかったのは、がらにもなく面白くないと思った。 でも、光邦くん曰く、月城さんはルリくんと付き合ってるらしい。 それを応援してる、蒼羽さんはどんな気持ちなんだろうと思うと、少し胸がいたんだ。 蒼羽さんが遊びたいなら遊べばいい。 傷付かずにいてくれたらいいと思う。 最終的に俺のところに来てくれたらいい。 あの人は束縛が嫌いだし、俺もするつもりはない。 好きかどうかと聞かれたら正直まだわからない。 蒼羽さんが他の人とするのは、そう言う人だとわかってるから、なんとも思わない。 ただ、月城さんとするなら、……うん、面白くないよな。

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