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気まぐれ

「なに?知り合いなの?」 少し不機嫌そうに顔をしかめる間中さんを横目に吉田さんがまぁねと、ぎこちなく笑う。 「この間は酔ってみっともないとこ見せてごめんね? あのあと大丈夫だった?」 「全然ですよー。すごく気になってたんです。 カズマさんこそ大丈夫でした?」 「俺は大丈夫だよ。 あ、間中、ルリね。俺が元カノと別れて飲み荒れてた時、街中で酔い潰れてるとこ介抱してくれたんだよね」 間中さんに出会いの経緯を言うと、またすぐルリくんに向き直る。 「ずっとお礼が言いたかったんだよね。 あ、草薙さん、ルリ。気が利かなくてごめんね、二人とも好きなの飲んで」 「わー、いいんですか?」 「ありがとうございます」 どうぞ、と穏やかに微笑む吉田さんに、会話を続けながら見えない手元でそれぞれのドリンクを作った。 ルリくんはいつもノンアルコール。 俺は今日は飲んじゃおうかな。 「心配してたんですよー。その後いい人は現れましたか?」 「いや全然。てかもうしばらく恋とかいいかな」 「えー?カズマさんあんなに一途に人を愛せて、こんなに優しいのに勿体ないですよー。そんな寂しいこと言わないでせっかくカッコいいんだからちゃんといい人見付けてください」 「もー、あの日も思ったけどとことんあげるね?いい人できるかな?」 「カズマさんならすぐですよー。頑張ってください」 「てか、その敬語なによ? この間みたいにため口でいいよ。のんびりしたルリのしゃべり方癒されるし」 どんどん仲良くなっていく二人に、俺の行きつけの店の、俺のルリだ、としたかったであろう間中さんが不機嫌になっていくのがわかった。 「あ、てか、あそこのカウンターの男性、この間の人だよね?」 「よく覚えてるねー」 「いや彼の容姿は一回見たら忘れないでしょ。謝ってこようかな」 「え?いいよ、わざわざ。 酔ってただけで、そんな大したことじゃないじゃん」 月城さんとも面識があるのか、立ち上がって席に向かおうとする吉田さんにルリくんが遠慮する。 うん。俺もなんとなく月城さんと吉田さんは話した方がいい気がする。 てか、ルリくんは自分に向けられる目に鈍感すぎる。 絶対吉田さん、ルリくんのこといいなって思ってるでしょ。 その横ですごい表情になってる間中さんも。 そーゆーところは、蒼羽さんを見習った方がいい。 自分への好意に敏感だから。 めんどくさいと判断して捨てられてきた男たちを思い浮かべなんだか少し苦い気持ちになる。

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