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信用

リチェールside 千が記憶喪失の時に出会ったカズマさんのことを、千がよく思ってないのはわかってた。 でもさ、カズマさんお客さんだし。お店のお得意様のお連れ様だし。 なによりオレ自身、あの時はカズマさん酔って少し暴走しただけで、なにもされてないし、別れた彼女さんのことであんなにもお酒に飲まれるくらい打ちのめされる人がどうしても悪い人には見えなかった。 「大体、リチェールは鈍感すぎる。 わかってんの?お前に近付く奴なんて十中八九、頭イってるやつなんだよ」 口喧嘩がヒートアップしてついにはここまで言われてオレもカチンと来る。 何度も助けてもらったし、心配してくれてるのはよくわかる。 わかるけど、オレも男だから。 「ねぇ、そんなにオレ信用ないかな? 実際色々あったし、助けてもらったことは感謝してるけど、千に助けられなくても回避できたこともあったし。 そもそもオレ何度もいうけど男だし」 ずっと最初はうんうんと聞いてたけど、結局家に帰っても続く喧嘩に、そろそろ嫌気がさしてきた。 千が心配ばかりすると、自分が情けなくていやだった。 オレだって、千を守りたいし頼られたいのに。 オレはそんなに千にあれもこれも言われるほど子供じゃないし、対等に扱われたい。 「何かある度に、俺は男だから大丈夫、とかさ。一回自分の今まで振り返ってから言えよ」 「オレが他の人に抱かれたのは男子校だからだよ!」 「最近の警察事件にまでなったこと思い出してみろよ。ボーッとしやがって。お前の顔が男を誘ってるような顔してんだよバーカ」 ムカつく! 好きでこの顔なわけじゃねーし! 「とにかく、お客さんとしてきたならカズマさんに関わらないとか無理だし! カズマさん千にもお詫びしようとしてたくらいいい人なんだよ? そんな人が彼女と別れて深酒してたくらいでなんだよ。ちっさいな! 大体、カズマさんとあのまま何かあったとしても千がオレのこと忘れて別れた時期じゃん!言われる筋合いすらないっての!自分が元カノと会ってたこと棚にあげるんじゃねーよ!」 言ってしまって、ハッとする。 これは、千とあの女性のラブホでのツーショットがショックすぎて、何もなかったことは知っていたのに今更八つ当たりのような攻め方をしてしまった。 しまった、と顔をあげたけど、千はスッと目を細めてオレを冷たく見下ろした。 「なら、好きにしろよ」

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