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選択

千side 動揺して泣いてる原野の話は佐倉でもわかりにくいらしく、とにかく近くにいると言う原野を車で迎えて話を聞くことにした。 見付けたときこの寒空の中、原野は汗だくの上、涙目で、そこにリチェールがいないことに俺も内心焦っていた。 「純也、大丈夫?ほら落ち着いて」 原野に駆け寄ろうとした佐倉の手を、逆に原野がすがるように掴む。 「雅人!!ルリがなんか公衆電話からかけてきて助けてとか言う女の子に会いに出てったんだよ!探してもいねぇし! また危ない目に遭ってたらどうしよう!!」 あのバカ。 顔が強張るのが自分でもわかる。 誰だ?公衆電話からかけてくる女の子? 情報が少なすぎる上、助けてと言う不穏な言葉に気がとられて焦ってしまう。 「ごめん!月城!俺ルリにひどいこといった!」 明らかにパニックになってる原野が今度は俺の服を掴む。 今にも泣きそうな顔で見ていて痛々しいくらいだった。 「ルリから今回二人が喧嘩したこと聞いて、そんなんじゃ愛想つかされるぜって……。 ルリがそんなやつってわかってたし、俺もルリの優しいところに今まで散々甘えてたのに! ルリにもうそんな自分を犠牲にするような真似してほしくなくてきつく言っただけで!!」 早口で捲し立てるように言う原野を後ろから佐倉が宥める。 その瞬間、その瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。 「一人で耐えさせるために言った訳じゃない………!」 きっと心を鬼にしてきつい言葉を言った原野も傷付いただろう。 「原野、ありがとうな。 リチェールのこと心配してくれて」 ぽんぽんと、まっすぐな黒髪を撫でると、やんわり佐倉にどかされた。 こいつ………リチェールに抱き付いたりはするくせに。

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