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選択

スルッとベットから降りようとするリチェールを、後ろから抱き締めた。 「な、なに?……ふあ………っ」 首に唇を落とし、吸い上げるとビクンと反応する。 唇を離すとリチェールが顔を赤くして首を押さえながら口をパクパクさせた。 「キスマークつけた!?」 「さぁな。……ほら、原野が呼んでるぞ」 「千のバカ!いじわる!」 俺とドアを交互に見て、ドンドンと鳴り止まないドアに駆け足で向かった。 その体に早く俺の跡を残したかったなんてガキくさい独占欲、教えてなんかやらない。 お預けされたんだから、これくらいの意地悪可愛いもんだろ。 カチャっとリチェールが鍵を開けた瞬間、弾丸のように部屋のなかに原野が飛び込んで来てバタン!と後ろ手でドアを閉めた。 「そんなに慌ててどうしたのー?」 「雅人の野郎が歩く性欲なんだよ!」 興奮気味に言う原野の言葉にぶっと吹き出しそうになる。  リチェールも笑いをこらえたように口元を押さえながら原野をソファに座らせた。 「歩く性欲ってなにー?」 「すぐ抱きついてきたり、き、キスしようとしてきたり!」 …………ガキか。 なんなら俺らは今ヤろうとしてたっての。 少し佐倉が憐れになる。 「えー?付き合ってるならいいんじゃない?」 「むり!!!」 即答する原野にリチェールが困ったように笑って自分もソファに腰かけた。 その瞬間、原野がガバッと起き上がりリチェールの肩を掴む。 その目は一点を見ていて、リチェールがあっ!と思い出したように首筋を隠した。 「お前も性欲か!?」 その言葉にもう我慢できなくて笑いが溢れてしまった。 クスクス笑う俺を見て原野がキッと睨み付けてくる。 何て言うか、本当に名前の通りのやつだと思う。 「なに笑ってんだよ月城!」 「いや…てか、佐倉どうしたんだよ」 「あいつはいいんだよ! 俺はルリと話すからお前どっか行けよ!」 リチェールの腕に抱き付いてそう言うけど、リチェールも口元を押さえてごまかしながら揺れる肩が笑ってることを物語ってる。 「ハイハイ」 今回原野とも揉めたらしいし、時間を作ってやるかと、二つの頭を順番にぐりぐり撫でて部屋をあとにした。 とりあえず、時間を潰すためにわざわざこの寒さのなか外に出たくもなく、からかってやろうと佐倉の部屋に向かった。 「純也って、うぶすぎるんだよね……」 部屋に入ると、思いの外、落ち込んでる佐倉がソファでうなだれていた。 「うぶって言うか、ガキすぎない!? だって俺らが高校生の時ってほぼ毎日ヤってたよね!?」 「………お前、それ原野の前で言うなよ」 「言わないけど!でもさー、そろそろちゅーくらい、いいんじゃない?もー、あのガキ」 カチッとタバコに火をつけ、少し苛立ったように煙を吐き出した。 原野と佐倉の床事情なんて知りたくねぇんだけど。 「ルリくんともうしてるよね?」 「当たり前だろ」 「だよねー。 でもさぁ、なんかルリくん小慣れた感あるけど、意外とそういうの苦手そう。ねぇ初めての時ルリくん怖がってた?」 「教えねぇ」 鼻で笑うと、佐倉がはーっと長くため息をつく。 付き合った相手と先に進めず悩む憐れな28歳の男の姿に少し同情する。 キスなんて初日にしたし、付き合う前から風呂にいれたりしてし、なんならさっきもヤろうとしてた。 「ルリくん色気あるもんなぁー。 元からってよりは千くんと付き合ってからだよね? いきなり色気増したもん」 「お前さっきからリチェールで変な想像してんじゃねぇよ」 「わー、男の嫉妬とかみっともなーい」   「まぁ、原野は色気不足だよな」 「あはは。怒るよー?」 しばらく話してると、佐倉がリチェールと原野が個室に二人きりと言うことを思い出し、それがおもしろくないらしく、迎えにいこうと立ち上がった。 俺はさすがに原野には妬かねーっての。

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