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選択
リチェールside
目を覚ますと辺りは薄暗く、隣で千がすやすや眠る千を見て、また情事が終わってオレはすぐ気を失ってしまったんだと申し訳ない気持ちになる。
昨日、カズマさんのことで一晩中心配かけて今日、こんな遠くまで迎えに来てくれて、絶対疲れただろう。
ごめんね、千。
腕枕をしてもらってピッタリくっついたまま背中に手を伸ばした。
千のいい匂い。落ち着く。
肌の温もりや、甘くて低い声も、全部がオレに安心感を与えてくれる。
こんなに優しいひとにもう二度と、あんなことさせてしまってはだめだ。
いい加減にしろって言うのに、こうしてそばで何度も守ってくれる。
千が安心できるように、オレは今までのようじゃだめなんだと深く反省する。
昔のことがあって、男のひとに乱暴にされるのは慣れてるつもりだった。
でも乱暴をした相手だって傷ついてることを知って、自分ばかりが悲しんで逃げて楽をしちゃだめなんだとわかった。
それでも何かあったとき、オレ自身が、オレを大切にしないと一番大切なこの人を傷つけることになる。
なんだかすごく、難しい。
でもきっと、人と生きていくって、そういうことなんだろうな。
本当に千には教えてもらいっぱなしだ。
そっと腕枕とは逆の千の手を握って頬っぺたを擦り寄せる。
「だいすき……」
この人の負担になりたくない。
オレだって頼られたいし、心配ばかりされるのはまるで子供扱いされてるみたいで不安だった。
でも、そういうことじゃなかったんだね。
「……リチェール?怖い夢でも見たのか?」
寝起きの悪い千が、ぴくっと目を覚ましオレの背中を優しく撫でてくれた。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いや、寝れないのか?」
「んーん。今オレも起きて、千に引っ付きたかっただけー。
ごめんね、まだ寝てていいからねー」
「いや、寝れねぇんだろ?起きるよ」
朝弱いのに、眠たそうにしながらもオレをぎゅうっと抱き締めて起きようとしてくれる。
「千、オレも寝るし寝てていいよ?昨日オレのせいで全然寝てないでしょ?」
「なにかあったら起こせよ」
オレの額に優しくキスをして再び目を閉じた。
時計を見ると、まだ朝の5時でホテルのモーニングまであと二時間くらいは寝れるなと千の温もりに包まれながら目を閉じた。
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