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冬休み
リチェールside
戻ると千がきれいなお姉さんと楽しそうに話してるから、つい嫌な態度をとってしまった。
仕事で忙しい中付き合ってもらってるのに何様って話だよなぁ。
あとでちゃんと謝ろう。
それはさておき。
「ルリ!俺たちの順番来たぜ!」
渡された懐中電灯をぶんぶん振り回してワクワクしてる純ちゃんを目の前にだらだらと冷や汗が込み上げた。
オレ、まじでホラーとかだめなんだけど。
「純ちゃん、懐中電灯振り回したらだめだよー。オレが持とうか?」
「いや俺が持つ!てか懐中電灯いらなくね?」
いるに決まってんだろ!!
むしろ十本くらいほしいわ、と言いたいのをグッとこらえて笑顔をキープした。
ていうか、いらないって言うくらいなら持たせてよ!
こういうのが好きなのか、楽しみで仕方ないと体全部を使って表すかわいい純ちゃんを前に、お化け屋敷は嫌だなんて言えなかった。
雅人さんもちょっと疲れてるみたいだし、さくさくと終わらせよう。
「では、中は簡易的ではありますが迷路になっております。大変暗くなってますのでお足元に気を付けてお進みください。リタイアもできますのでその場合は最寄りの非常口へとお進みください。幽霊役や小物には触れないでくださいませ。ではいってらっしゃいませ」
血だらけのナース服を着たボサボサの髪の女性に案内され中に進んだ。
思いの外暗く、ごくっと生唾を飲む。
「よし、ルリ!せっかく迷路になってるんだしどっちが先にゴールするか競争しようぜ」
このバカは何をいってるんだろう。
少し進んだだけでもう既にリタイアのドアを探してると言うのに。
「純ちゃん、せっかく二人で入ったんだから一緒に楽しもうよー」
ね?となんとか笑顔を取り繕って言うと純也が「あ」とオレの後ろを指差した。
いやいやいや。
オレそーゆー手に乗らないから。
昔、ホラーが苦手なことをネタに散々友達に弄られたことを思いだし、ふんっと鼻で笑ってふりむいた。
「あ"~………」
顔半分がぐちゃっと崩れた女が至近距離でにたりと笑っていて、頭が真っ白になる。
「っぅ、あああああーーーーー!!!!」
お化け役には触れないでという注意も真っ白に忘れて、思いっきり女性を突飛ばし、大笑いしてる純也も突飛ばし、リレーに選らばれる自慢の脚力で道を突っ走った。
なにいまの、なにいまの、なにいまの!!!
グロすぎんだろ!!!
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