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冬休み

すっかり純也とはぐれてしまい、懐中電灯もない中、前にも後ろにも進めず隅っこでなにも見ないよう頭を抱えて縮こまってしまっていた。 リタイアしたいのに、怖くて動けないなんて情けない。 なんでよりにもよって迷路なんかにしてしまったのか全く理解ができないんですけど。 ずーっと絶え間なく聞こえる赤ちゃんの泣き声が恐怖心を煽った。 こんなことなら、素直にお化け屋敷だけは本当に苦手だから雅人さんと行ってってお願いしたらよかった。 スマホで助けを呼びたいのに光でお化けに見つかるんじゃないかって怖い。 お願いだから誰かたすけて。 「あれ?あれもお化け役?」 「すみませーん!見つかってますよー!」 そのとき、笑い声と共にライトで照らされビクッと顔をあげると大学生くらいの男の人三人がオレを見ていた。 天の助けがあったかのようなタイミングで、急いで立ち上がりその人たちに駆け寄ると、情けなく震えた足がもつれて抱き付くような形になってしまう。 「わ、わ、なに、なに!?」 「え?一般のひと?お化けのひと?」 「す、すみませ……っ友達とはぐれて……リタイアのところまで連れてってくださいぃ~……」 どうか断らないでくれとすがるように服をぎゅうっと握って顔をあげると、三人がオレの顔をじっと覗きこんだ。 「え!全然いいよ!てかむしろ、一緒にそのお友だち探す?」 「怖いでしょ?手繋いであげようか?」 「俺だっこしてあげるけど!?」 そんなに情けない顔をしていたのだろうか。 でも、今は男のプライドとか全部どうでもいい気がした。 とにかく早く外に出たい。 優しい人たちに会えてよかった。 「本当に助かりますー。すみません、男なのに恥ずかしいです」 「え!?男!?」 「男なの!?」 「は!?まじで!?」 揃いも揃って大きく反応する三人を見て地味にショックを受ける。 360度どの角度から見ても超男だろ。

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