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大人と恋人

__________ 「わっ」 体育の授業前、靴箱を開けたルリが驚いた声をだした。 そこからはドサドサっと手紙があふれでてきて、ルリは戸惑いながらその手紙を拾う。 俺も手伝おうと一枚手にとって、固まった。 「ルリ、これ……」 「うーん。陰湿だねぇ」 ルリは何もなかったようにへらっとその手紙を拾っていく。 書かれていた内容は、死ねとか殺すとか、月城に近付くなとか。 それより酷かったのが。 「ルリ、靴が……」 ルリの運動靴がズタズタにされていたことだった。 悪意が溢れていて、背中にゾッと冷たいものが走る。 でもルリはひょこっと靴を覗き混んでまたヘラっと笑った。 「一日でここまでやるなんて暇だねぇ」 「……怖くねぇの?」 「なんで?こんな陰湿な奴にオレが取っ組み合いで喧嘩して負けると思う? むしろ堂々と体育休めてラッキーじゃん」 千のところにいこーっと、鼻唄混じりで運動靴や手紙をがさがさゴミ箱に突っ込む。 いや、これ絶対危ないだろ! 「ルリ!お前この事月城に言えよ!?」 「えー、言わないよ。これは千を取り合う戦いだからね。負けてらんないし」 なにその闘争心。 何でこいつってたまに交戦的なの。 まぁ、ルリに落ち込んでるようすはないのはせめてもの救いだけど。 それからというもの、ジャージや筆箱、教科書にノート、色んなものが無くなる事件が勃発したり、ひどいときには外廊下を歩いてると窓から水を被せられたりした。 それでもルリはへらへらと笑った。 もちろん、俺は許せないからなにかある度に騒ぐんだけど、必ずルリに止められる。 「純ちゃん、オレは平気だから落ち着いて。オレがなにか騒ぎを起こしたら保護者の千に迷惑がかかっちゃう」 かけたらいいだろ!月城が原因なわけだし! そう思うのに、ルリにお願いと言われたらもうなにも言えず仕方なく頷いた。

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