358 / 594
大人と恋人
__________
「わっ」
体育の授業前、靴箱を開けたルリが驚いた声をだした。
そこからはドサドサっと手紙があふれでてきて、ルリは戸惑いながらその手紙を拾う。
俺も手伝おうと一枚手にとって、固まった。
「ルリ、これ……」
「うーん。陰湿だねぇ」
ルリは何もなかったようにへらっとその手紙を拾っていく。
書かれていた内容は、死ねとか殺すとか、月城に近付くなとか。
それより酷かったのが。
「ルリ、靴が……」
ルリの運動靴がズタズタにされていたことだった。
悪意が溢れていて、背中にゾッと冷たいものが走る。
でもルリはひょこっと靴を覗き混んでまたヘラっと笑った。
「一日でここまでやるなんて暇だねぇ」
「……怖くねぇの?」
「なんで?こんな陰湿な奴にオレが取っ組み合いで喧嘩して負けると思う?
むしろ堂々と体育休めてラッキーじゃん」
千のところにいこーっと、鼻唄混じりで運動靴や手紙をがさがさゴミ箱に突っ込む。
いや、これ絶対危ないだろ!
「ルリ!お前この事月城に言えよ!?」
「えー、言わないよ。これは千を取り合う戦いだからね。負けてらんないし」
なにその闘争心。
何でこいつってたまに交戦的なの。
まぁ、ルリに落ち込んでるようすはないのはせめてもの救いだけど。
それからというもの、ジャージや筆箱、教科書にノート、色んなものが無くなる事件が勃発したり、ひどいときには外廊下を歩いてると窓から水を被せられたりした。
それでもルリはへらへらと笑った。
もちろん、俺は許せないからなにかある度に騒ぐんだけど、必ずルリに止められる。
「純ちゃん、オレは平気だから落ち着いて。オレがなにか騒ぎを起こしたら保護者の千に迷惑がかかっちゃう」
かけたらいいだろ!月城が原因なわけだし!
そう思うのに、ルリにお願いと言われたらもうなにも言えず仕方なく頷いた。
ともだちにシェアしよう!