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大人と恋人

__________ 「雅人、ルリがさぁー……」 「んー?なぁに?」 「……………なんでもない」 ソファに腰かける雅人の膝にごろんと寝転ぶ。 こいつは担任だし、うまく対処してくれないかな。 でも俺が言ってしまったら、ルリの我慢が意味をなくしてしまう気がして、言っていいのかダメなのか正解がわからない。 とにかく俺が今できることなんて、ルリを一人にしないことだけだと歯がゆく思った。 「純也最近なんか考え事してるしての多いねぇ。おばかちゃんなんだから、一人で考えてないで教えてごらん」 「ああ!?」 「ふふ。よかった。怒る元気はあるみたいだね」 さらっと髪を撫でられ、顔が熱くなる。   ……ほんと。 雅人に相談したらすぐ解決してくれるんだろうって思ってる自分にすごく戸惑う。 「たとえばの話なんだけど」 「うんうん。たとえばの話ね」 「そう。たとえばの話で雅人のこと好きなやつが嫉妬で俺に悪質な嫌がらせしてきて、俺が騒いだら雅人に迷惑かけるからって我慢してたらどうする?」 「んー?そうだねぇ……」 コーヒーにひとくち口をつけて、ふぅ、と雅人がため息をつく。 「てか、それルリくんのことだろ? なに?ルリくんなにか嫌がらせされてんの?」 ずばっと言い当てられ、ドキッと体を起こす。 まさかこいつ気付いてたのか? 「お前知ってたのか!」 「いや、知らなかった。 でも千くん人気者だしルリくん最近みんなに知られたし質問の内容的にそうだろうなって。 いやー、純也ほんと隠し事とか出来ないよね。心配かからなくていいわー」 ははっと軽く笑って頭をわしゃわしゃ撫でてくる。 たとえばの話でっていったのに! 悔しくて唇を噛んでると、雅人がまた俺を寝転ばせて、小さく息をついた。 「内容によるよね。やっぱルリくんも男の子だし下手に俺ら大人が介入するのってプライド傷付けちゃうかもじゃん。 ルリくんの自分でまず解決しようとするところは悪目立ちすることはあっても長所だからねあくまでも」 「じゃあ放置すんの?」 「放置とは違うけど。一番大切なのは何とかしてあげることじゃなくて寄り添ってあげることだよ」 見上げれば雅人が穏やかにふんわり笑う。言ってることは教師っぽいのに、見せる表情は先生の顔じゃなくてなんだかドキドキする。 「良かれと思ってしたことが、その人からしたらありがた迷惑だったりするもんな。 まぁ本当にルリくんが無理してるようなら千くんが気付くでしょ。俺だってルリくん本人から相談されたらちゃんと対応できるし。 純也は、本当にルリくんのこと想ってるからこそ、動くに動けないんでしょ。そんな純也が悩んで出した答えなら、絶対間違いなんてないんだから、純也自身がルリくんのために最善だって思うことしてあげたらいいんだよ」 少し長い話のあと、雅人が俺のデコをべしっと叩いてニッと笑った。 「ようするに悩め少年!ってこと!」 俺のこと、100%信頼して背中を押してくれる笑顔に不思議と元気が湧いてきた。

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