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大人と恋人
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「失礼します」
コンコンとドアが鳴り、ホームルームを終えた雅人が真面目な顔をして入ってきた。
「月城先生、ルリくんの様子は……」
「雅人さぁん!!」
「わっ」
半泣きで飛び付いてくるルリを驚きながらも雅人が抱き止める。
「ルリ!逃げんな!まだ話は終わってねぇだろ!」
「言ったもん!オレもう全部ちゃんと話したもんー!!」
「千くーん、なにこれどんな状況?」
連れ戻そうと追いかけるとルリが雅人を盾にするように身を隠し、俺ら二人に板挟みになった雅人が苦笑して、両手を軽くあげて降参のポーズをとった。
結局、月城にそばにいた俺が気付いたのがその範囲ならルリはもっと色々隠してるはずだと話を掘り下げたところ、筆箱からカッターの刃が出てきたりとか、帰りに階段から突き落とされそうになったりとか、他にも俺にさえ気付かれないようにしてたことが多々あった。
叩けばホコリしかでないな、こいつは。
そういえばたまたま嫌がらせの現場に居合わせたからわかった内容で、ルリからこういうこともあったと言う相談は一度もなかった。
そして言わなくても見抜いた月城はすごいと思う。
ルリの基本的に心配事を隠す性格は変わらない。
こっちからとことん探りを入れないと、驚くほど上手に隠してしまう。
でも、ちゃんと今回は少し余裕のある状態で月城に助けを自分から求めたわけだから、そこはやっぱり成長だろう。
「ほら、二人ともとりあえず座って」
ルリを捕まえようとする俺と、雅人を盾にしようとするルリで、雅人を挟んで3人でソファに座った。
「佐久本くんから話聞いたけど、3組の折山くんが怪しいよねぇ」
雅人が携帯を取り出してさっきの黒板の画像を見せながら話始めると、それをみた月城がまたぴくっと眉を潜めた。
「雅人さん!そんなの千に見せないで!」
「黙ってろリチェール」
それ見てルリがさらに縮こまる。
そりゃこんなこと書かれたらムカつくに決まってるだろ。心配で。
あのチビブタだけじゃなく、面白半分に他のやつにちょっかいを出されかねない。
「証拠がないから動きようがないけど、とにかくルリくんは絶対一人で行動しないでね。
千くんの名前に今は助けられてるから他のやつが早々面白半分で手を出してこないとは思うけど、念のため帰りは千くんと帰るんだよ?襲われたら怖いし」
「………はい…………千、ごめんね?一緒に帰ってくれる?」
雅人の言葉にルリがしゅんとしながら月城を見上げる。
「当たり前だろ」
不機嫌さはまだあるものの、言い切る月城にルリが顔を赤くして頷き、そろそろと月城の隣に座りなおった。
ルリって、大人のように見えて全然穴だらけなんだな。
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