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小さな挑戦状

放課後。この学校は部活動は強制入部で残ってる生徒の数は多い。 だから場所は放課後、人の出入りのない屋上にした。 僕は先に屋上に向かってベンチに座ってルリくんが来るのを待つ。 ドキドキする。 こんなこと、本当はしちゃいけないのはわかってるのに引くに引けない。 そんな苦しさの中、浅い呼吸を何度か繰り返し目を伏せた。 一つしかないドアがキイッと開いて目を向けると、三人が入ってきた。 気持ちを落ち着かせるため、深く息をつく。 「…………ルリくんは呼び出せたの?」 「いや……」   反省したようすもなく、そういう3人にカッと頭に血がのぼる。 心の隅では少しホッとした気持ちが悔しくて、ごまかすように叫んだ。 「いい加減にしてよ!僕の望み叶えてくれるんじゃないの!?少しは役に立てよな!!!」 はぁはぁ、と息をついて顔をあげるといつもはすぐおだててくる3人が無表情に僕を見下ろしていた。 その冷たい目にドキッと体が強張る。 「な、なに」 「累さ。自分のことばっかで俺らのこと考えたことある? かわいい嫌がらせならまだしも、そんな犯罪まがいのことさせてどうしたいの」 今まで見たこともないような冷たい声に動揺して一歩後ずさる。 それより早く距離を詰めてきたやつが僕の腕を乱暴に引き寄せた。 「いた………っ」 「これだけよくしてやったんだ。報酬くらい払えよ」 その一言であとの二人が僕の服に手をかけた。 まさか、と血の気が引いて叫ぼうとした瞬間、バシン!と乾いた音と共に頬に痛みが走った。 叩かれたショックに頭がついていかず、じわっと視界が歪んだ。 「なんで……ぼくのこと、好きなんじゃないのぉ……?」  「すきだよ。バカっぽくて弱々しくておだてたらすぐヤれそうなところが」 無情な言葉とは不似合いな笑顔を向けられ、足元からなにかが崩れ落ちる気がした。 どうして、ルリくんのために怒ってくれる人はたくさんいるのに、僕には味方がいつも居ないんだろう。 今から何が始まるかわからない怖さに体が震えて息がつまった。 「はっ、はっ、はっ………ひゅ……っ」 声をあげたいのに、起こってしまった過呼吸が苦しくて声がでない。 それなのに、3人は乱暴な手つきで無遠慮に僕に手を伸ばした。

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