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四方八方

七海side 私が投稿したかっこいいひとに出会ったという日記に"実習中じゃないの?(笑)"ってコメントがついてバカにされてるような気がしてイラっとしてそのコメントを消した。 バカなのかなこの女。 女はね、いつまでも恋のアンテナは張り巡らせておかないと。 それにこんなにかっこよくて、しかも月城医院の息子よ? 何がなんでもほしいでしょ。 彼女がいようと関係ない。 だって、先に好きになったか、あとに好きになったかそれだけでしょ? 幸い同居してる生徒も味方にできそうだし。 「七海ちゃーん、今日も可愛いねー」 目をハートにしてへらへら私に手を振る生徒たちに笑顔で手を振り返す。 うん、可愛い。可愛いよね、私。 そのはずなのになんで月城先生はうんともすんとも言わないんだろう。 お手洗いから保健室に戻ると、月城先生がパソコンで仕事しながら数人の生徒と話してるところだった。 その生徒はデレデレしていて月城先生への好意がストレートに見える。 私が戻ったことに気付くとその生徒数人に鋭く睨まれ、私が来たことを嫌そうに保健室を出ていった。 この学校ゲイ多すぎじゃない?キモいんだけど。 男で生徒のこの子達に負けるはずないのはわかってても、まったく私自身月城先生に手応えを感じないのに、生徒には優しい姿にムッとしてしまう。 嫌味の一つでも言ってやろうと口を開いたとき、ガラッとノックもなしにドアが空いた。 「月城。ルリ返せ」 そこにはキャラメル色のコートを傍らに抱えた一人の小さな生徒が不機嫌そうに立っていた。 その、可愛らしい顔に目を奪われる。 小さな顔にアーモンドの形をした大きな猫目。 男子校であり得ないと思いつつも、女の子なのではと疑ってしまいそうな容姿をしていた。 ルリくんも美人よね。 可愛い顔してるのに、日本人離れした綺麗さがあって、何だか色っぽい。 同居してるルリくんの性別が男でよかったって思うもの。 「リチェールなら来てない」 月城先生が答えると不満そうにどかどか入ってきて、ドサッとソファに座った。 「まさ………佐倉が連れてったって聞いたからここかと思った」 「進路の相談でもしてんじゃねぇの」 なんだか親密に見える二人に、少し面白くない気持ちになる。 「こんにちは。どこか体調悪いの?」 そうじゃないならとっとと出てってほしい。月城先生と二人っきりになりたかった。 男子生徒は不機嫌そうに私を見上げて、ふいっと顔を背けた。 「月城。ルリから連絡来るまでここにいていい?」 「いいけど、大人しくしとけよ」 私の質問には答えないまま、ごろんとソファに寝転がってスマホゲームを始めた。 なんなの?態度悪くない? 「ルリくんと仲良しなんだねぇ。羨ましいな」 本当はこういう素直じゃない子は嫌いだけど、月城先生と仲良さそうだし、打ち解けようと頑張る姿勢を見せるのは大事だから無理矢理笑顔をつくって生徒に近付いた。 生徒は目も合わさず、あっそとだけ短く答える。 むかつく!! こいつ目ついてる!? もしかして、こいつもゲイなんじゃない?

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