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四方八方
七海side
あの近かった距離や、ルリくんにやたらと懐いていた口の悪いチビが彼女に喧嘩を売るようなことを言った私に怒ったことから、ルリくんが恐らく月城先生の恋人なんだろう。
ほぼ確信を持っていた。
それなら、話は簡単。
きっと、女に飽きてゲテモノも摘まんでみたくなったのよ、月城先生は。
男の本能は女を求めるんだから。
手っ取り早く体を差し出せばいい。
こっそり帰宅の看板を前にかけると鍵をかけ、ベットのシーツを整える月城先生の背中に抱き付いてそのまま押し倒した。
「仕事しろ実習生」
「ふふっ。硬派なんですね」
わざと胸元の空いた服を着て、その胸の谷間を月城先生から見えるように体に押し付けた。
「ね。私、割り切れるタイプですよ。
とりあえず、二番手スタートってことでいかがです?」
そう言って、月城先生の手を掴み自分の胸にもっていく。
しばらく触ってなかったなら、女の体は最高でしょう?
そのままキスをしようと月城先生に顔を近づけると手のひらで止められた。
「悪いけど、俺一途なんで」
そう言って、余裕の笑顔を向けられ、ムッとする。
昔から狙った男を落とせなかったことはなかった。
だから、絶対押したらいける。
「あと、香水の匂い移るだけで不安になるようなやつだから、ごめんなさい」
ごめんなさい、とか普段の口調から使わなさそうな言葉を半笑いで言われ、カッと頭に一瞬血が上る。
どこまでも余裕のその態度が、私を焦らせる。
「なんなら、一回きりでもいいですよ。相性試してみません?」
「みません」
「私、テクニック持ってますけど」
「間に合ってます」
にっこり完璧な笑顔で全てばっさり断られ、わなわなと怒りで体が震えた。
この私が男にフラれるなんてありえない。
バサッと自分でブラウスを脱ぐと、後ろ手でブラのホックを外しそのまま月城先生に体を擦り寄せ、首筋に舌を這わせた。
はーっと深いため息が聞こえ、月城先生の手がやっと私の肩にかかり思わず口角が上がった。
やっとその気になったのね。
「月城先……」
「悪いけど、俺お前に全く魅力感じねぇんだわ」
さっきまでの笑顔をなくし、なんの感情も読み取れない冷たい表情に息を飲む。
ショックで固まる私を退かせると、白衣を肩からかけた。
「今が大事な時期だぞ。今回だけはなかったことにしてやるから、仕事は大切にしろよ」
それだけの言葉を残して、月城先生は保健室を出ていった。
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