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四方八方
初めて男に断られたショックで体が動けない。
この私が?
断られたの?
いくら付き合ってる人がいるからって、その相手はガリガリのちんちくりんの男よ?
顔が多少いいからって、あんないい男を男にくれてやるにはもったいない。
絶対私の方がいいのに。
そう思ってるとバタバタバタと足音が近付いてきて、バンっとドアが乱暴にスライドした。
上半身はほぼ露出してしまった今の状態に思わずびくっとして振り返ると、今にも泣きそうな酷い顔をしたルリくんが私を見て固まっていた。
「………なんで………」
すでに泣きそうだった顔は、見る見る歪んで青ざめていく。
こんなやつに、私が負けたの?
ありえない。
ぎりっと奥歯を噛み締め、必死に余裕の笑みを作った。
こいつがいなかったら、もっとスムーズにいったのに。
「………見られちゃった。月城先生とあなたが付き合ってるのよね?
月城先生が、ルリ君には内緒って言うから見なかったことにしてくれる?」
「…………っ」
ああ、その傷つく顔、イライラする。
悲劇のヒロインぶってんじゃないわよ。
あんたは悪役でしょうが。
ヒロインは、私よ。
悪役は、退治しなきゃね?
「でも、一回体重ねたらやっぱり欲が出ちゃった。だって月城先生。すごく優しく抱いてくれるんだもん。だからルリ君、月城先生のこと私に頂戴?」
白衣を脱ぎ捨てて、近くの花瓶を床に叩き落とした。
ガシャン!と音が響いて割れた瞬間、びくっと揺れるルリ君に微笑みかけた。
「あなたは月城先生の前から消えて?」
それだけ言うと、息を吸い込んで大声をあげた。
「きゃーーーーー!!!!やめて!!!助けてぇーーーーー!!!」
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