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強さと弱さ
「せ、せん……っ鏡やだぁ……んぅ」
嫌だと言うオレの口をキスでふさいで、オレの息が切れるのを見計らうと余裕たっぷりに微笑む。
「そりゃ、嫌がることしてますから」
そのまま、音をたてながら指で中を犯される。
音も、この姿も全部が恥ずかしくて、それなのにやめてと抵抗することすら拘束された腕では叶わない。
顔を背けたら、中は敏感なところばかり意地悪に弄られるし、見たら見たで、鏡越しに千が可愛いと言う。
恥ずかしさと気持ちよさでもう気が狂いそうだった。
「ひ……っあ、ああ───っ」
「やめてほしい?」
「ん、んぅっや、やめてほしぃ……っゃめてぇ………!」
千の一言にすがるように頷くと、優しく前髪をあげられ、そこにひとつキスをおとされる。
拘束を解かれ、自由になった手足は少しだけ痺れていて、それでもすぐ千に抱き付いた。
やっぱり、エッチの時はちゃんとくっついてくれないとまだ少し怖かった。
子供のようにしがみついて泣き出したオレを千が少し困ったように笑いながら抱き締めて撫でてくれる。
「怖いよ、ばか……っせんの、ばかぁ……ちゃんとぎゅーしてくんないと、もう千とえっちしない……っ」
「はいはい。ぎゅーしたかったな。
でもリチェールさん、これお仕置きだから」
悪びれる様子もなく笑って言う千の胸をグーで数回叩いた。
それでも、頬を撫でながら顔を持ち上げられ、ぶつかる視線に黙らされてしまう。
「んぅ」
キスで塞がれる言葉も、しないっていったのにまた肌に触れてくる強引な指先も、全部をなんだかんだ言って受け入れてしまう。
「挿れていいだろ?」
「……っいじわる」
「よく言われる」
断られるなんて微塵も思ってない余裕の笑顔にせめてもの反抗で睨むけど、千は全く気にした様子もなく、それどころかまた可愛いと笑ってオレの耳に優しくキスを落とした。
裸のオレと違ってシャツもスラックスも着ていた千からカチャカチャとベルトの音が聞こえて、片手でオレを相手しながら、器用だなって思うとやっぱり千の経験を物語ってると痛感してしまう。
思わずオレの舌を弄ぶ彼の舌を甘噛みして睨み上げた。
「千ばっか余裕いっぱいだから不安になるんじゃん……もっとオレを求めてよ……」
少し驚いたような表情の千は、間をおいて、ふはっと笑いをこぼした。
「余裕があるように見えるなら、リチェールの目は節穴だな」
その言葉と一緒になんの前触れもなく押し込まれた圧迫感に、高い悲鳴をあげて体が跳ねた。
「んぁっ………やっ……いやぁ───っ!!」
「っお前さ、墓穴掘ってるよ」
ばーか、と悪態をつく割りにその表情は少し苦しそうに笑っていて、余裕があるようには見えなかった。
そのまま、いつもなら慣れる待ってくれるのに、激しく揺らされもう二回もイったのに押し寄せてくる乱暴な快感に千にしがみついて泣くことしか出来ない。
「好きなだけ求めていいなら、そうさせてもらう」
「や、やだっ……っん……と、とま……ってぇ……!」
「リチェールが目の前でキスされてガキ相手にすげぇ腹立った」
「千っ!やめてぇ!も、やらぁ……!壊れちゃう──っ」
「他の奴に泣かされたのも、お前の泣き顔を見られたのもむかつくし、離れようとした時には本気で縛り付けてやろうかと思った」
「怖い………!せ、千!気持ちよくて………つらいよぉ……っこわい!やめてぇ!っああ─────っ!」
必死に怖いと伝えても止めてくれないのははじめてで、乱暴に奥を突かれ壊れたようにイき続ける体に意識が遠退く。
千が一瞬息を飲んで中に熱いものが広がった。
「心配性にもなるだろ。俺だって余裕なくすくらいもうリチェールばかり求めてるよ」
遠退く意識の中、聞こえた言葉にまた涙が頬に伝った。
この言葉が愚かなオレが見た都合のいい夢でもいい。
今だけは、この幸せを信じていたいとそう願って目を閉じた。
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