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強さと弱さ
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翌朝、もう復活したからやっぱり学校にいくと言い出したリチェールを無理矢理今日は休めと言いくるめ、不安そうな表情のリチェールの頬を撫でた。
「千、昨日は本当にごめんね」
頬を撫でる俺の手を両手で包んで首を傾ける。
「いい。それより今日はちゃんと休めよ。お前自分で思ってる以上に疲れてるから」
「ただのサボりだよ、オレのは」
リチェールが困ったように笑う。
いつも少し余裕のある朝のこのコーヒーを飲みながらニュースを見る時間は穏やかだ。
「千、オレね、本当にもう大丈夫だからね?」
念を押すように身を乗り出して言ってくるリチェールに、視線を落とす。
「シンヤとの掃除はゴリラ先生が自宅謹慎になったから終わりになったし。
関わることもうないからね。七海先生のことだってオレがちゃんと千のことを信じられたらなんでもなかった話なわけだし。あとゴリラ先生はあくまで被害者なわけだしオレ殴られたのは本当に何ともないからね?」
リチェールの言わんとしてることがわかり、目を細めた。
「ふーん。まぁでもあいつら三人は許さねぇけどな」
「千っ!」
必死な表情で見つめられ、だめだと目をそらす。
こいつの甘さに付き合ってたら、今回みたいなことが後をたたない気がする。
絶対そこは譲らない。
「今回はオレ七海先生がいやだったからとか、シンヤにチューされたからとか、ゴリラ先生に殴られたからとかで泣いた訳じゃないよ?ただオレが勝手に不安になって泣いちゃっただけだから………」
「………………」
「千が昨日いーっぱい甘やかしてくれたからオレとしてはラッキーだったし。もうこんなことで泣かないから、あの3人になにもしないで」
「………………」
無視を徹底する俺にリチェールが体をピッタリくっつけて甘えてくる。
「千、お願い。オレやっぱり優しい千が好きだな」
「お前、性格腹黒だろ………」
可愛い困り顔に観念してため息をつくと、リチェールが困ったように笑う。
結局、こいつの甘いところに付き合ってしまう俺も甘いんだろう。
「秋元とはもう関わるな。……あとはリチェールの好きにしろ」
そう吐き捨てるように言うと、リチェールが嬉しそうにぎゅーっと抱き付いてくる。
「よくこれだけ傷つけられといてそう思えるよな」
呆れ半分に言うとリチェールがへにゃっと柔らかく笑う。
「千がいてくれるだけで嫌なこと全部忘れちゃうからいいの。それよりせっかく優しい千がオレのために人に何かするのやだし。なにより人にしたことは自分に返ってくるんだから、人間絶対ちょっとやられてるくらいがちょうどいいんだよー」
「お前はやられ放題だけどな」
「次はなにかされる前に千に守ってもらうもん」
「よく言うよ」
リチェールがあまりにもコロコロと表情を変えて笑うから、俺も呆れながらもつられて口許を緩ませていた。
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