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大嫌い
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「………巻き込んでごめんね、千くん」
ホテルの個室のベットに腰かけて迷惑をかけた気まずさから辛うじて笑うと、千くんがカチッとタバコに火をつけた。
「いや、俺らのことだって何回も巻き込んできただろ」
いつもなら、俺と純也、千くんとルリくんで別れるのに今日は部屋をルリくんと純也に、俺ら二人になっていた。
「……まぁ、俺もリチェールのこと怒ったし。もっと深さあると思って焦ったよな」
慰めてくれる千くんに辛うじて笑う。
酷いことを言ってしまった。
純也のショックを受けた顔が頭から離れない。
「俺だって厳しくしたあげく、リチェールに嘘吐かれて頼るつもりないってハッキリ言われたし。あんま子供扱いし過ぎるのもよくないんじゃねぇの」
「千くんはルリくんのこと子供扱いしてる?」
「してるつもりはないけどな。どうしても過保護すぎると、自分が子供だから俺の負担になってるってアホな方向に考えにいかれるから参ってる」
「ルリくんは健気だね。……俺はどうしても純也のこと子供に見てしまうんだよな」
多分、それは純也が子供の頃の俺と似てるから。
純也くらい俺もわがままで素直じゃなかった。
大切に育ててくれた両親に、誕生日に買ってくれたおもちゃがお願いしていた色と違ったとか、たったそれだけの理由で酷い言葉を喚き散らして、困らせた。
買い直しに行ってくれた両親は、そのまま事故で帰らぬ人になってしまって始めて自分がどれだけひどいことをしたのか痛感した。
大好きなのに、2人に大嫌いとかあっち行けとか嘘つきとか、そんな言葉を投げつけてそれが最後になってしまった。
だから施設では何でも譲った。好きだったプリンも、大切にしていたおもちゃも他の子が欲しがったら何でも。
俺はさ、何もいらないから。全部、全部あげるから周りの人のことが大好きだって気持ちがその分伝わったらいい。
____でも、純也だけは。
あの子だけはダメなんだ。
誰にも渡したくない。なんでもいいよいいよって言ってあげれたら手っ取り早く好きになってもらえるってわかってるのに、つい感情的になってそれができない。
泣きそうな純也の顔を思い出して、胸の痛みに一つため息をついた。
なんにしてもさっきのは俺も言い過ぎたし、早めに謝ろう。
「千くん俺だめだー。純也のことガキだって言う割りに俺もガキだわ」
はーっとため息をついてごろんとベットに寝転んだ。
「ほらガキ。早く謝って仲直りしてこい。
さすがにお前とダブルベットとかごめんだからな」
「えー。自分でダブルの部屋とったくせにー。ツインでもよかったじゃん。俺と寝たかったんじゃないの?」
「アホか。早くリチェール返せ。こっちも説教がある」
冗談を交えて笑うと少し気持ちが軽くなる。
千くんもアホか。とか言いながら笑ってて和やかだ。
うん。
よし、純也に謝りに行こう!と気合いをいれてベットから勢いよく立ち上がった。
その瞬間、グラッと視界が反転する。
「ぅわ!」
「っぶね!」
いつの間にかベットから落ちていたクッションを踏んでしまった故だと後になってわかった。
ぐいっと千くんに手を引かれたけれど、そのままバタン!!と音が鳴り響いた。
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