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となり

リチェールside 「あ、おはよー」 「ん」 朝9時にロビー集合だったのに、10分前に同時にドアを開け、顔を合わせる。 昨日純ちゃん達から断ったし、もしかしてはじめてしちゃったのかなぁなんて下世話なことを考えてしまい思わずパッと顔をそらせた。 純ちゃんなんか少し気だるげだし、雅人さんもうまく言えないけど、どことなくいつもと違う感じがするし。 ……でも、純ちゃんだしなぁ。 雅人さんと千がチェックアウトしてくれてる間、純ちゃんと並んでロビーのソファに座ってるとその事ばかり考えちゃう。 「ね、純ちゃん昨日はどうしたのー?食欲なかった?」 それとなく聞いてみると、純ちゃんが硬直して分かりやすく真っ赤になった。 「……まぁ、そんなとこ」 え!?なにその反応! したの?しちゃったの? こんなに純真で無垢な純ちゃんが!? どうしよう。 そうなんだと思うと、オレなんか泣きそうなんだけど。 ごくっと生唾を飲んで他に探る言葉を考えた。 「雅人さんと仲直りできた?」 「……あー、まぁ。そっちは?」 いやいやいや!今はオレのことなんてどうでもいいから! なんで話をそらすの。 え、これ、まじ? 「オレらはかなり揉めたけど仲直りできたよ。 純ちゃんたちはどうやって仲直りしたのー?」 「ふつーだよ!ふつー!それより今日は何する!?早く決めるぞ!」 今度はハッキリこの話は終わりだと言うような雰囲気を出されてしまいもどかしい気持ちのまま純ちゃんが広げた観光雑誌を覗き込んだ。 ………オレは、まだ信じてない。 絶対信じない。 今なら嫁にいく娘をもった父親の気持ちが何となくわかる気がする。 すっっっごく寂しいし、めちゃくちゃ複雑だ。 ホテルを出る前、千がタバコを吸いに、純ちゃんがお手洗いに、それぞれいなくなって雅人さんと二人っきりになった。 「雅人さん。昨日は取り乱して突き飛ばしてごめんね」 昨日のことを謝らなきゃ、と手を合わせると、気にしてないように笑ってくれた。 「いやいやー。怒ってるルリくん可愛かったよー。俺の方がごめんね。千くんの唇奪っちゃって。やだったよねぇ」 「ううん。わざとじゃないってわかったのに子供みたいに拗ねてごめんなさい」 「ルリくんはお利口さんだね」 雅人さんが優しく微笑んでオレの髪を撫でた。 言葉か柔らかくて心地いい。 怒るとチンピラみたいな話し方になるけど、やっぱりこの人の纏う空気は穏やかだ。 下手したら女の人にも見えるような、かっこいいよりは綺麗系の雅人さんには柔らかな言葉がよくあってる。 純ちゃんの言葉遣いもこの人といたら大丈夫だろう……たぶん。 「昨日純ちゃん大丈夫だった?揉めてない?」 純粋に心配して出た言葉だったけど、言ってからさっきの純ちゃんの様子を思い出して、しまった、と思った。 まるで探ってるみたいな言葉になったかも。 雅人さんを見上げると、気まずそうに顔を赤くして頬を人差し指でぽりぽりと掻く。 「…………まぁ、大丈夫だったよ。すこーし揉めちゃったけどね」 なにその間! 雅人さんならしてたとしてもさらっと流しそうなのに。 顔赤くしてさ。 ますます怪しい。 どっち?したの?してないの? 気になるのに、ハッキリ聞くのは怖い。 もやもやして思わず黙り混んでると、純ちゃんと千が戻ってきてその話は終わった。 「どこいくか決めた?ちびっこ達」 雅人さんが純ちゃんのサラサラの黒髪に手を乗せる。 しかし、それはいつものように振り払われることはなかった。 「……昨日のミニ動物園途中で帰っちゃったからもっかい行きたい」 「お。勇者だねー。昨日スタッフに絶対顔覚えられてるよ、俺ら」 ちびっこって言われてあの純ちゃんが怒らないなんて! てか、さっきから純ちゃん全然雅人さんと目会わせようとしないし、なんか雰囲気が違う。 ヤバイ。これはもう絶対何かあった。 でもやっぱり聞けなくてモヤモヤばかり募っていく。

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