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嘘つきトライアングル

久瀬に会うためにエントランスに向かうと、たまたまリチェールと居合わせて余計に焦る。 いや、リチェールも千の仕事が終わる時間を見計らったんだから起こり得ることだったんだろう。 わざと勘違いしそうな言葉を使って、センターまるで体を重ねたような雰囲気を出した。 少し焦ったけれど、見事にリチェールのネガティブが暴走して千に強烈なビンタを一発お見舞いすると、そのままイギリスでも指折りのすばしっこさでネズミのように逃げていった。 「あんの、バカちび……!」 残された千は苛立ったように目を据わらせて口元に歪んだ笑みを浮かべる。 ほら、リチェール関係のことなら、怒ったりもするんだ。 『大丈夫か?冷やす?』 『いい。それよりリチェールにどこまで話した?』 俺がその頬に手をのばすと、やんわりかわされ、ズキッと胸が痛んだ。 『キスしたことだけ』 『わかった』 それだけ短く答えると、千は駐車場へ向かった。 勝手に言うなっていっただろ!とか、怒られると思ったのに嫌味のひとつも言わない。 リチェールの俺のことを蚊帳の外にした言葉も、千の態度も気に入らない。 あくまで二人の問題だから入ってくるなって2人からダイレクトに言われたようだった。 千、俺を愛して。リチェールのように。 俺だってたくさん傷付いてきたし、リチェールと違っていつも一人だった。 俺だって、優しくされたっていいだろ。 千の暖かい包容力に包まれるリチェールの居場所。 あそこがほしい。 リチェールのこと引き取ったなら、俺のことだって引き取れるだろ? 何がなんでも、俺だって幸せになりたかった。 あの二人は少し拗れてるだけで、話したらきっとすぐまた関係を戻すだろう。 ぐらついてる今がチャンスだ、と俺も急いでリチェールの向かった方向に走り出した。

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